一村の支柱を測り直した鍛冶コウガのもとへ、麓の代官所から山方定書が下りてくる。支柱は三寸五分、材の割り当ては一村年六十本、検分は年二度の目視で十分――そう定められた。だが割り当てで下りた六十本の材に型を当てれば、規格を通るのは十九本きり。
峠向こうのハザ村では、七尺で立つはずの柱が六尺で立っていた。三村ぶんの材は、一つの貯木場から都合よく割り振られている。その差配の元にいたのが、鉱山一帯を差配する代官ヨドミだった。ヨドミは声を荒げず、穏やかに数と割り当てで押し切る。「三寸五分と年六十本で、十分だ」。
「──これは、通ります。ただ、あんたの言う『十分』では、通らない」
代官は三村への炭の割り当てを止め、窯と炉を同時に冷やしにかかる。その冬、長老バド爺が逝き、五十年研いだ菜切り包丁を村に残した。村はその一挺を「刃の返りの元」として広場の箱に納める。
冬のあいだに三村の柱を数え上げると、痩せた柱の本数が確定した。当初はコルド村の話を持ち込むなと拒んだハザ村の村役タネまでが、ついに型を受け取り、自分の口でハザ村の規格を言い直す。そして三つの村の坑道が、同じ日に、同じ支柱を立てた。ヨドミは割り当ての権を三村の刻み板に預けて、山を下りていった。
初夏の朝、火起こしに戻る。台に並ぶ槌は六本。ハザ村から来た子ノブが、六本目の槌を受け取った。荷方の口から、男爵家の武具方の名が一度だけ出た。
本作は「追放鍛冶コウガ」シリーズ第2巻(全6巻・完結)。