「伯爵の憂鬱」ー作品世界の深さが素晴らしいのに、堅苦しくはない。ほっとする作風で、柔らかさと温かさが心地よい。細部に魂が宿る丹念な仕上がりで津谷先生の力をいかんなく感じさせてくれる。
「流れ星に祈って1,2」ー好きになっちゃったんだよね、
仕方ないよね、簡単に他に行けたら誰も苦労しやしないよね、というお話。片想いの辛さ、自分のことを好きでいてくれなくても、やっぱり好きになった人から気持ちが離れていけない。そして、その人が人生最大の哀しみに苦しんでいるときは、つまりヒロインも、大切な友人を亡くしたことを意味した。簡単に乗り越えられないけれど、もがいていつかは、いつの間にか、ふらつきながらも進めている心。このヒロインや彼のやり取り、漫画家橋本先生の巧みな筆捌きで、二人を暗いトンネルからようやっと未来の為に抜け出させる。抑え込んできたヒロインの叫びもきちんと吐き出させながら、或意味無理の無いように、また反対に、或意味積極的に傷が癒えるように、全てよく描けたな、と思って読み終える。
「最高の聖夜」ー子ども達に向かう美しい心が尊い。生への執着を喪失した空虚な彼が生気を取り戻すところが、ジンと来る。人に少しでも幸せを届けたい気持ちが、自分をも幸せにさせる。ヒロインには人間臭いささやかな欲求も。クリスチャンでなくても、この特別な時期に善人でありたい気持ちを刺激する。
「永遠のウエディングベルセット1 別れの日まで」ー女性の悔しさ。戦争の無念さ。でも真っ直ぐヒロインは前を見る。時代の風潮の中では異端視されたかもしれない(同じ女性からも女性の自立を唱える人は足を引っ張られた時代。アメリカでさえ。況んや日本じゃもっとずっと後の時代まで、家庭に入ることを求められていた。。。)が、貫き通して生きたことがもう、それだけでもの凄くかっこいい。彼は、当時の男性には望めない位に理解力包容力が理想的なレベルにあって、それでいてラブラブが文字通り死が分かつまで続くことを確信させる、男性として最高の部類かと。
単品で読んだ。
もっとみる▼