台詞の一つ一つが見事にストーリーを無駄なく進行させて、生き生きと語っているために、地味な絵が却ってキャラの表情を、読み手の想像力の翼に委ねさせてくれる。
まるで、単純化されている方が豊かな表現力を持っているみたいに、コミックの持つ可能性は
、キラキラや麗しい絵柄だけではないと気づかせてくれる。
「のだめ」の二ノ宮先生の画風が派手でないのに凄く中で楽しめるのを思い出す。
そしてこのHQ、定石通りに彼はやはり最高の部類に属しており、何もかも持ってるのだが、ヒロインを愛していると気づくときの描写がまた盛り上げてくれる。ヒロインもまた、気持ちを伝えようと決意する流れに入る過程があるのだが、唐突でなくて、恋に臆病になっていたヒロインの背中を押す一連の言葉に私自身まで説得されたような気分になる。
恋愛の高揚感も意外な位にちゃんと味わえる。
家族の日々も題材としてどこかリアルな印象があり、台詞に嘘臭さのないことや十分な生活臭が描かれていることが、このストーリーを味わい深くしている。
こうなると、彼も素敵に見えてしまうから不思議なものだ。
私はこんな人と再婚したかったな、と、心底思った。彼の一挙一動が素晴らしい。
そして、随所でベタな台詞のインパクトが不思議なほどに心に刺さってくる。
12月毎に公開されるアメリカのロマンス映画(このハーレクインの舞台は英国だけれど)のように、ラストは彼がビシッと決めてくる。今度はヒロインよりも先に伝えたいことをキチンと言葉にしてくる。
だからそのやり取りは、それまでヒロインの心の動きにずっと寄り添った読み手の私に、効果的な爆弾として感動を運んでくる。
子供たちは、本能的に大人を受けとめている。間に通うものが本物であれば、血の繋がりや「ママのお友だち」など関係がない。
このストーリーは、私の求めていたような幸福がある。
読み続けてきた流れの中で偶然手を伸ばした一冊だが、見つけて良かった。
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