ゾクッとくる灰色の瞳のレイヴンスカー伯爵。ヒロインのプルーデンスは、憧れのその人セバスチャン・ベンハーストに見つめられて、瞳に魅入られて、「もみくちゃにされたい」と。
ヒロインは瞳に参ったようだが、私は星合先生の描かれる男性の口元が好き。
薄い唇がセクシーだ。顔の輪郭と目と口のバランスが好き。おとうとクンのジェームズも可愛かったのに脇役とは。。。(プリーズカムバック!)
滑稽なくらいおどろおどろした何かが出て来そうな、何かが棲んでそうな、何かが葬られたかもしれないような、そんな不気味な城、ウルフィンガー城。そこはヒロインが昔から好奇心をそそられる恐怖の館だった。
妄想たくましいプルーデンスは、その城に乗り込もうとして、館の主であるセバスチャンと知り合ったのだった。
この話は、ヒロイン姉妹の回りにモンスターに見えるような人物を配している。お目付け役のプロードガードル夫人が(「ハイカラさんが通る」の牢名主を思い起こさせる)独特の見た目と異様にフットワークの軽い行動とで怪演。
ベイツ夫人も見た目はおばちゃんであるが、中身は噂好きのある意味モンスター。村の人々の無責任な噂、姉妹が勇んで行った城探検も、村では噂筒抜け、面倒臭い周囲の目に未婚の姉妹は晒されている。
従兄弟のヒュー・ランカスターも一癖も二癖もある、面倒な絡み癖あるうるさい奴で、この姉妹の周りはまともな人間は居ない構図。小説家観も皮肉が効いてる。
プルーデンスは妄想好きが高じて怯まず城への興味を貫き、その延長上で出会った誰しも恐れる悪魔伯爵に好感を抱き続けて、人が彼を人殺しと恐れようとも動じない。
私は、人がなんと言おうと自分の目を信じるという話が大好き。
怖さよりも、こけおどしのような、黒と雷と不気味な古城の外観、伯爵を恐れる登場人物達の様子が面白かった。
ラブがすぐ始まったら、恐怖の伯爵と館の正体見たりが早くなってつまらなくなるだろう。
この段階では、伯爵の底知れぬ引力から離れる気の無いヒロインの行動に付き合うことで、謎解きに近づいていく、そんなところでいい。二冊構成だから。今後の感情の育ちかたが楽しみ。
書店に並んだ作品の紹介の文言で、星合先生が画業35周年と知った。
おめでとうございます。
私が好きな漫画家先生である、くらもちふさこ先生も同じく今年35周年のようなので、お二人は同期となることを知りました。
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