野性の花嫁 1巻

ハーレクインでは男性をアポロンにたとえるのをもう何度か見てきたけれど、ヒロインがアテネ神になぞらえられるとは珍しい。
意図は良く判る。戦ってきたのだ。その分傷ついても来たのだ。一方で名前がヘレナとは、暗喩なのだろうか。

父親が死んだことを喜ぶ強いインパクトで幕開け。そこから読み取れるヒロインの壮絶な少女時代、と、そして、強い意思。やさぐれてもおかしくはないのに、冷静さと自分を取り巻く状況の瞬時理解力。彼女の自由を奪い痛め続けた力から彼女は解放された。この意味をストーリーの陰から問うとき、ヒロインは怯むことなく周囲に自分の言葉で語る。この光景で、解き放たれたヒロインの観点は人々の固定観念にも疑問を投げ掛ける。

封じられても、囚われても、遮断されても、力づくで引き戻されても、どれほど暴力的抑圧がなされても、何度でも脱出を図ってきたという。やっと「敵」が居なくなってくれた後に取り返すもの。それはお金でなく、社会生活であり教養であり日常の平穏であり身を飾ること人と交流すること。

「野性」のタイトルを描写するシーンは専ら序盤くらい。乗馬のシーンは既に馬術の心得、つまり上流階級の貴婦人の嗜みに属していて、野性は片鱗を窺わせるのみ。

アダムの心境推移をもっと絵で感じたかった。
貴族の掟破り的な行為のその後の顛末はどうだったのだろう。
義母様のお人柄にはほんと参った。ハーレクインで一、二を争うほどなのではないか。最低の居心地のところから、最高の温かい居心地を見せるダーネル家へ。さちみりほ先生の絵にかかると愛嬌一杯の可愛いありがたいおばさん。小憎らしい恋敵のかたがしっかり憎まれ役の仕事して、これ迄の人生の大半を不遇に耐えたヘレナ、これからは幸せしかない、と、人に恵まれた環境への期待一杯で読み進められる。物語開始までの時間軸に於いてもう充分壮絶な体験はし尽くした。母のもとに行こうとして、自由のために闘ってきた勲章を胸に背筋を伸ばして生きる姿は凛々しい。

ハーレクインは久しぶり。相変わらず、といった安心感、永遠の金太郎飴。ちょっとお高め価格のHQ。１冊に納める難しさはお察しするが、ユーモアも加えてさちみ先生劇場は今日も就寝前の寛ぎのひとときを楽しませてくれた。
クオリティがピンきりのHQコミックの中でこのそつのなさにホッとする。
( HQは評価甘めにつけてます。)

あー、やっぱりさちみ先生のハーレクインは素晴らしい…！長い原作を短い漫画に落とし込み、華やかな作画、ドラマティックな展開、力強いヒロインと優しいヒーローがさちみ先生の力で幾倍にも輝いて見えます。

今回は虐たいされて育った女性が美しく変身するというシンデレラストーリー。しかしその身にはひどい虐たいの痕が残っています。華やかな社交界でなぜデコルテを隠していたのか、終盤の展開まで気付かなかった私。そういうことだったのかと納得しました。そしてその後のヘレナの行動には彼女の矜持とアダムへの信頼や愛が感じられて涙が止まりません。

正直、アダムはちょっと物足りない男でしたね(笑)後見人は…ということを知らなかったので、知ったときには仕方ないかとも思いましたが、優しすぎる男は優柔不断でもあるのですよね。ヘレナのことがあって覚悟も決まり、実は助かったのでは？婚約者があれでは結婚してからも苦労しそうですもん(笑)

アダムの義母や妹も心優しい人たちで、ヘレナの心が癒えて本当に良かったです。プリシラにも最後救いがあるようだったし、こういう、ちょっとした幸せが物語をさらに品良くしていると思います。さちみ先生の描き方に本当に感動させられます。

さちみ先生のハーレクイン、オムニバスでドラマにしてくれないかしら…。原作あってのハーレクイン漫画ではあるのですが、さちみ先生の場合はさちみ先生の作品となっている感じがすごくするんですよね。美しくなったヘレナとアダムが初めて対面するシーンなんか、映像として思い浮かべるほど素敵でした。どんどんきれいになっていくヘレナと、惹かれていくアダムの様子もジワジワと伝わってきて、漫画ならではの描写だと思います。

また素敵な作品が読めることを楽しみにしています。

読み放題対象作品です(^^
なにせ、さちみりほ先生の画が大好きで・・💕舞台設定的にも豪華だし、更に画も美麗なので、感動する事間違いナシ！！
やっぱね・・・虐げられてきた主人公が救われ、しかも美しく変化して山あり谷ありのあと幸せになるってサ・・王道っちゃ王道なんだけれど、だからこそエンドまで安心して読める・・これぞハーレクインの良さ❤ってもんですよ(^^
しかもヘレンの芯の強さと逞しさと気高さネ✨ボロを纏って痩せた身体・・・それなのに美しいんです♪流石、さちみ先生！！構成もメリハリがあるので魅せ場がより輝きを増します。
そして何より、さほどドロドロ感もなく、もちろん主人公はハッピーエンドなんですが、最終的には周りの皆も幸せになれるような、光が見えるようなエンドなので、嫌な気持ちにならずに「感動・感涙」で読み終わることが出来ます(^^
コレが一番ですネ！！

さちみりほ先生は某Ｘでガシガシと持論を展開なさってるので「先生……もっと自分を大事にして……火の粉の中に飛び込まないでー！」と思ってる。
でも本が出てしまうと私は買ってしまう。そして「ああ、やっぱり良い！」と叫んでしまう。
で、X（旧Twitter）を読んでしまい「ああ！また火事の中に飛び込んどる！」と嘆いてまた本を読み返したりしている。
先生……自分の身を大切にしてね……読者は先生が心配だよ。