「妖艶の姫」は既に言われているように、後味が一番悪い、確かに理解不能という内容です。
それにそれまで、普通の一般世界とは別世界に住んでいた女性が、純粋な普通の青年と惹かれ合う。そしてやがて二人で逃げ出そうとするものの、青年は女性を自分と同
じ普通の世界へと連れ出せないまま、結局別れがやってくる。そしてこういった話の展開が、津雲むつみの「カタリーナ」に、似ているなと思いました。
おそらく、たまたまだとは思うのですが。こういうレディコミって、どうしても似通った話に、なってしまいやすいのか?
それからこの中で「紫妖花」は、確かに一捻りある内容ではあると思います。
あまり好みではないけれど。皮肉で残酷な運命に翻弄された、三人の若い男女の悲劇という感じ。プリシラ・麗という、どこか中性的な雰囲気を漂わせた妖艶な美女の存在感もあり。
「月華美人」というのは、もうそのまま、作中でも「今様楊貴妃」とか呼ばれている通り、楊貴妃の現代版という感じですね。あまり面白くないです。
そして文字通り、主人公の翠蘭の破滅の原因となる、安禄山になぞらえた男性のサリムが登場してくるのですが。でもやはりどうしても、この作者の東洋人の人種別の描き分けができていない感じが気にかかりました。アラブ系の男性のはずのサリムが、例によってただの日焼けした、欧米人男性のようにしか見えなかった。
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