希望を大きく持てない病を得てから暫くが経ち、対峙の必要な岐路のような局面を乗り越えてから本作を病床で読んだ。自分の本書選択がまだ果たして自分自身の応援にまでなるかまでは当初はわからなかったけれど、読んでいて人間関係や恋にも悩みながら、部活を
通じて高校生活を謳歌する青春が鮮やかで、良く出来た青春物として気持ちよく普通に読み進められ、充実感と共に読み終えた。当事者たる本人達には苦楽混ざる三年間の軌跡であっても、こっちは読んでて爽快な印象一杯の全19巻。
もともと河原先生の手腕は私には安心感がある。既に何作か読んできて心理描写も背景も、細かな日常風景の言葉の掛け合いなども、違和感を抱いたことがあまりない。描こうとするものについての無駄なゴテゴテはないし、何を言いたいのかわかりにくいひとりよがり的半端さもない。
変な奇跡も、ドラマでしか起こりえないご都合も、また、主題と離れた場面の異様な膨らませ方もないから、見事に纏まりのある彼らの三年間の物語を見させてもらって、やはり巧いストーリー、構成だと思った。
野球と吹奏楽部、着眼点も良かったし、つばさと大介の悩みどころなど現実味も強く感じ取れた。
枝葉末節的な教室内の事を排除して部活の上下や、強豪校の部活漬けの日々にフォーカスしたのも成功の一因では? 正に努力の積み重ねにほかならないのが部活の神髄なのであり、毎朝の朝練、休日などなしに練習する姿、組織の中の一人としてまた1個の血も涙も通う高校生像、血と汗の結実を見届けることになるのだ。ヒリヒリとする個々のぶつかりが避けられないのもリアル。
また、技術的な練習には体育会的ノリもあってか、つばさの地道な頑張りが、しっかり絵に収められていて良い。ひたむきさ、それが表されてる。漫画あるあるの(実は本人も知らなかった眠っていた)天才だったというような安直さと一線を画しているのも好ましい。
唯一、修旅の甲子園球場外観下見が間延び感がした。
但し、たいしたことはない。
「青空」の持つ語感とよく合っているとは感じた。
読んでいて実に清々しさ溢れる明るい漫画。
北海道地方の方言や地名などの地方感、冬季の雪や寒さも示されて季節感も豊か。
全面に応援すること応援されることが彩られていたが、うるさくはなく、闘病生活の私も応援されたと感じた。
脂の乗った河原先生の会心作の一つといえるのではないだろうか。
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