表題作は24ページ。著者作品中、1・2を争うくらいに好きで、この1篇のために今も大事に単行本を持っています。
日露戦争中の日本、主人公の屋敷に年始で集まる学友達。楽し気な正月風景の描写、飄々とした変わり者の村野の行動が、さりげなく素晴らし
い。そして、雪の中での主人公と村野のやりとりがまた、ものすごく良いんですよ。軽口の裏に見える村野の覚悟、主人公の心と裏腹の悪態。ラストも空虚さの残る文学的なもので、素晴らしい以外の言葉が出ません。語彙力よ。
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表題作の後、『サザン・アイランド・ホテル』まで、ほぼ今で言うBLジャンルの作品で、大半をJUNE掲載の軽い4ページショートが占めます。その中では『人参果』(古代中国舞台で、素直で誠実な弟子の子がかわいい)と、『さくらもち』(室町あたり、鬼に懐かれた小姓の気の強さが好き)が、ほのぼの昔話っぽくて好きです。
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その後は、短篇とちょっとしたエッセイ風漫画が交互に入っています。短篇は3作。
・『アッシャー家の3代目』儚げな青年、狂気の気配、魔物、と幻想怪奇の雰囲気。そしてあのオチ。
・『ピーターとピスターチ』男の子のピーターと、相棒の飼い犬ピスターチ。嵐の中のお留守番、精一杯の嵐との戦い、不安な風の音にふたり寄り添って、がんばったね!星4つ。
・『キノコのベターライフ』少年がある日取ってきたきれいな赤いキノコ。謎のキノコと不思議な雨と、明るい奇妙な話。
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