マリサとの生活を終えるまでの奇妙な超人間ぶりは面白かった。次章みたいな第3話以降、家族のドラマも少し。カインをコリンに替えて、アベルとの双子の確執か。しかし兄弟の微妙な関係や家庭問題にばかりこだわらずに、アリアドとの新たな展開に進む。彼はア
ベルにとって信用出来ない立ち位置で入ってきて、ストーリーの進行につれて次第に何かと関わり出すが、どうも彼の目的や異星人同士の距離感、なかなかに固定的役割にせず、次々新しい地球外人間型投入。新キャラ登場の度に、地球には既に何人も居るんだろうとの認識で、驚きは減っていく。それにしても話は一体どこに向かうのか。もともとアベルというキャラからしてとらえどころがない。その予想のつかない行動で周囲からは常人扱いされなくなったし、超人的身体能力などでも周囲を振り回す。読み手の自分も振り回される。人間の肉体を持った地球外生命体が、次第に自分の生き方、活動場所を見出だすも、確信も決意もなく、そうなるんだろうなぁという今の延長線の想像で行くという漠然とした感じ。
第六話「ベリンモン」のベリンモンたるやなにものであるか、というくだりに一番惹かれた。
アベルが音楽に感応する絵、海の中にアベルが気持ちよくなっている絵が素敵だ。
全2巻。314頁+313頁。1989〜1991年発表。
先生の作品では直近は「メッセージ」を読んでいた。こういっちゃなんだが、あちらと本作の星数は同じだが、本作のほうが遥かに魅力的だ。
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