結婚しているイコール他の人を好きになっちゃいけない。
誰もが考える一般論。
でも、このストーリーのように、破綻している男女が別れていないのはままあること。
人(新しく)を好きになるとき既に心のなかに、誰かが入り込む隙間は出来ていたのだ
。
それは片方だけの責任だろうか。
皆が皆一人の人を永遠に愛したい。そんな人に巡り会いたい。だからHQが好き。
でも現実は誰もに最高の恋愛相手と幸せな結末がある訳じゃない。こんなはずじゃなかった、そんな人生を送ってしまうことがある。直ぐにやり直しが出来るかと言えば、それもまた、簡単な引っ越しとは訳が違うのだ。
ヒロインの苦しみは物語のかなりを占めている。
HQの場合は、ヒロインに不幸な婚歴があっても大概過去形なのだが、これは違う。
ある意味、超現実的で、理由はシビア過ぎるほど。
私が子供の頃は、大人の人生相談は大概こんなパターン、つまり浮気か、ギャンブル、お酒だった。
今と違いもっと離婚しにくい時代だった。大人になってから、相談者は別れたくとも別れられないのが実情と知った。今も行動に移していないだけの人は多いだろう。内情は他人には見えない。
このストーリーは晴れやかさや軽やかさがないが、華麗でキラキラばかりのロマンス溢れるのは嘘だとばかりに、少しひねくれた確かな存在を主張する。
そしてそれが、出会いという基本要素と本気の恋愛感情とによって、HQお約束のハピエンで、重苦しさをやっぱり突破してくれるのだ。
ヒロインが既婚の身で飛び込んだことを、私は問題視しない。私はそんな巡り会いはないのでやったことはないけれど。
まるで、カラッとしない天候のロンドンへ、スペインから陽の光が射してきたみたいに、ラテン特有の屈折も持ち込みながら、ストーリーは暗いところにいたヒロインを明るい舞台に連れ出した。
新たな明日へ踏み出したヒロインが本当に羨ましい。
絵の好き嫌いはあろう。偶然も多い。
こういうHQがあることがただ感心させられた。
男女逆パターンで、現在進行形で男性が現状の結婚に問題を抱えて他所に目が、というのは確かレビューアーさん達に酷評されていた記憶があるので(私は未読なのだ)、この手の話は理解を示さない人が、HQ読者には多い気がする。私は状況によりけりで肯定する。
絵が好みでないとの理由では星数を変えないので、本作は私からは星五つを。
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