狼の条件、人間も獲物にしてしまう恐怖の敵として扱われているのではない。狼の心を持っている主人公の人間社会での必死のサバイバルドラマだ。そこには、甘いロマンスなどなくて、人の悪い部分を極大化して、味方は人間社会にはまずいない環境で、恰も一匹狼
の十代の女の子が、人間を利用し、人の隙をかいくぐって、自分を攻撃した人間にやり返す、抗争の構図しかないストーリーだ。息の休まることのない、敵だらけの中で、命懸けで必死。「狼」の処世訓のよう。ニホンオオカミは絶滅してしまったし、狼少女はお話の世界だけ、彼女の環境に愛が見えない、でも、愛を潜在的に求めてしまう話。
志賀先生のお話創りの才能は充分楽しめる読みごたえ。次々現れる、利用し利用される登場人物たちの人間関係が、あの時代はよく使われた題材だった、そうだった、と、その説得力に脱帽する。
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