マンガ多すぎ!業界最大級!!
無料会員登録で、新規登録クーポンプレゼント中!!

コミックシーモア×電子コミックの日

わたしのマンガ道
第一回
第二回
第三回
第四回
第五回

第5回

■いつか映画化したい『アドルフに告ぐ』

――佐藤監督は『GANTZ』や『砂時計』などマンガの実写映画化を多く手がけていらっしゃいます。
『図書館戦争』シリーズも原作は小説ですが、マンガにもなっていますね。佐藤監督の“絶対読むべきマンガ”は何ですか?

 「どうしても映画化が関係してくるんですけど、僕が映画化したいというか、されるといいなと思っているのが『アドルフに告ぐ』(手塚治虫)なんです。最初に読んだのは中学生のときだったと思うんですけど、初めて“映画を感じた”マンガです。当時、小説や映画は大好きだったんですけど、マンガはそこまで本気で読んではいなかったんですよ。情報が隔絶された田舎にいて、あまりマンガ雑誌を目にする機会もなかったので(笑)。僕に小説をいろいろ薦めてくれた国語の先生がいたんですけど、そのお家に遊びに行ったときに置いてあったんじゃなかったかな。」

――どういったあたりがお気に召しましたか?

 「ヒトラーが実はユダヤ人の血を引いているという機密文書をめぐって、ドイツ人とユダヤ人の二人のアドルフが運命に翻弄されていく、戦前から戦後まで何十年もの時間軸で描かれた物語ですよね。ゾルゲや尾崎秀実といったスパイが出てきたり、ベルリン・オリンピックや第2次世界大戦、日独の敗戦、イスラエルの建国などの史実に登場人物が絡んで、最後の最後にタイトルが腑に落ちるという構成がすごくいい…と、当時も思ったし今も思いますね。ヨーロッパと日本をまたにかけた話だし、長い話でもあるので大変だろうなとは思うんですけど。もしすごくお金があったら映画にしてみたいです。そういった意味で、是非読んでいただきたいですね!」

――佐藤監督作品として実写映画化。ぜひ拝見したいです!

 「あははは。僕は小説でも、リアルな歴史を描いた本格派なものより、その隙間を縫ってフィクションを描いたものが好きなんですけど、『アドルフに告ぐ』にもそういう匂いがあるんですよね。 僕は、普通の青春を送っていた友達同士が、戦争が始まって“俺は東に行くことになった”“そうか、俺は西だ。戦争が終わったらまた会おう。じゃあな!” みたいに別れ別れになるのが、たまらなく好きなんですね。
戦争ものをやるならそういう物語を描きたいなって思っていたんですけど、 第2次大戦ものだとどうしても重くなるし、当時を知らない僕らが扱っていいのかっていう疑問もいまだにあったりして、『図書館戦争』(有川浩)は完全にフィクションだしSFなので、これならやれるかなと思ってやったところもあるんです。 いま思えば、友達同士が生き別れになって再会するみたいな話型は『アドルフに告ぐ』にもあるんですよね。もともと好きなのか、そこで初めて好きになったのか、わからないんですけど。映画っぽいものを映画にしてうまくいく場合といかない場合がありますけど、いつかやれたらいいな…と思う、夢の企画ですね」

■「そのまま映像化」では済まない、実写映画化の難しさ

――『図書館戦争 THE LAST MISSION』では、
まさに日常のなかの戦争、戦争のなかの日常を描いていらっしゃいますよね。

 「それがやりたかったんです。さっきの友達同士の話はいつもしていて、わかってもらえるようでわかってもらえないような話なんですけど。戦争が日常化していて、そんななかにも普通の会話や恋愛があったりする。そのことを無性に描きたいんです。原作は小説で、今はマンガ発だと思ってる人もいるそうですが(笑)、マンガ版もアクション寄りの『図書館戦争 SPITFIRE!』(作画:ふる鳥弥生)と、王道の少女マンガっぽい『図書館戦争 LOVE&WAR』(作画:弓きいろ)と2種類あるので、小説とアニメと実写映画とともに、ひととおり見比べてみると面白いと思います」

――マンガの映画化で難しいのはどんなことですか?

 「例えば『GANTZ』(奥浩哉)でいうと、原作の奥浩哉先生がとにかく映画が大好きな方なので、ヴィジョンがものすごく映像的なんですよ。このまま映像化すればいいんじゃないかって思うくらいなんですけど、 実際にそのまま映像にしちゃうと、マンガの絵のほうが迫力があった、みたいなことが起こり得る。映像は動きますからね。かといって原作との答え合わせみたいになっても、映画としてのまとまりを欠いてしまう。だから、マンガをシャワーのように浴びてエッセンスを咀嚼した上で、シナリオができた段階でいったん頭から外し、自分の映像スタイルのなかでゼロから一個一個絵を作っていきました」

――どこかで原作から飛び立つことが必要なんですね。

「僕の理想は、あたかも映画で見たシーンが原作にもあったような気がする、でも原作を見てみたら全然違う、というものなんです。マンガは2年前に完結しましたけど、結末までの展開を知っていたら映画はああはならなかったかもしれないと思いますね。最終巻を読み終えたらやっぱり宇宙を見たくなるし(笑)。当時はまだ、ジャーナリストの菊地がドイツに行ってガンツ工場を見て…というクライマックスに至る展開の少し前で、 映画独自の結末をつけていいという話で始まったんですけど、ガンツバイクを使ったシーンや空中戦など、泣く泣くやめたシーンもいくつもありました。あれもこれも盛り込むとしっちゃかめっちゃかになるので、選択と集中が大事なんですが、省いていく作業がとにかく苦しいんです。ガンツは何なのかということも、奥先生の頭の中にあって全部は言えないということだったので、脚本家と一緒に、映画としてはこういう展開が面白いんじゃないかな、と作っていって、原作から逸脱しそうになると読み直して少し戻して。エンディングもそうやって先読みして作ったんですよ。だから映画ができた後のマンガの展開で似たようなカットを見つけると、ちょっとうれしくなったりしました(笑)」

■『砂時計』の文学っぽさ、『アイアムアヒーロー』のひねり

――そう考えると『GANTZ』は特殊なケースですか?

 「特殊なんじゃないですかね。僕が最初に映画化を手がけたマンガは『砂時計』(芦原妃名子)ですけど、あれは全10巻で完結していたんですよ。あの作品は主人公の杏(あん)が少女から大人になるまでの話で、島根と東京を舞台にさまざまなことが起こりますよね。そのなかで大悟を思い続けた杏が最後にある選択をするわけですが、連載マンガならではの波瀾万丈の物語を2時間にするのが難しかったですね。換骨奪胎しないといけない瞬間がどうしても来るんですよ。日常をベースにした作品ですけど、原作のイメージよりは自分のイメージ、少女マンガよりは映画の気分にちょっと寄ったかなって感じがします。人の生と死が描かれているし、ときどきあるズシーンと重い雰囲気に僕は文学っぽさを感じて、これを映画の空気感で表したいなって思ったんです」

――公開は来年ですが、『アイアムアヒーロー』の映画化も手がけられましたよね。

 「『アイアムアヒーロー』(花沢健吾は原作の花沢先生も映画好きな方で、特にゾンビ映画がすごくお好きなんです。最初に“変えてくれてもいいけど、僕が大好きなゾンビ映画にしてほしい”って言われたんですよ。それがいちばん大変じゃないですか(笑)。“このまま映画にしてくれ”って言われたほうがある意味楽ですよね。 ゾンビ映画って大まじめに作ろうとすると恥ずかしいものになりがちだから、笑える方向に行く作品が多いんですけど、我々は大まじめにやる、
花沢先生に気に入ってもらうことを念頭に置いていたので、大変な作業でした。ゾンビ映画には十八番的な運びがあるんですけど、 『アイアムアヒーロー』は、それを知り尽くした上で、あえてひねってあるんですよね。始まり方なんて、ミステリーみたいな日常ものみたいな、ジワジワとした展開じゃないですか。もちろん原作のエッセンスは汲んでやりましたけど、このやり方しかない、これが気に入られなかったらアウトだ、と思うくらい、恐れず映画流に解釈してやりました。結果的には花沢先生にもすごく気に入っていただけて、先生の笑顔を初めて見たような気がします(笑)」



■佐藤信介監督さんオススメ

アドルフに告ぐ
図書館戦争シリーズ
図書館戦争 LOVE&WAR
GANTZ
砂時計
アイアムアヒーロー 完全版
DEATH NOTE カラー版

佐藤信介
1970年生まれ、広島県出身。

武蔵野美術大学在学中に、脚本・監督を務めた『寮内厳粛(りょうないげんしゅく)』が 「ぴあフィルムフェスティバル94」でグランプリを受賞。01年の『LOVE SONG』で監督メジャー・デビュー。その後、『修羅雪姫』(01)、『COSMIC RESCUE』(03)、『砂時計』(08)、『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』(09)、 2部作として映画化された『GANTZ』(11)、『GANTZPERFECT ANSWER』(11)、 『図書館戦争』(13)等、数々のヒット作を生み出している。

最新作は10月10日公開『図書館戦争 THE LAST MISSION』。
2016年には『アイアムアヒーロー』、『デスノート2016(仮)』の公開を控える。

著名人のマンガ道をすべてみる

TOPへ



LINEで送る
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

お得情報をGET!登録してね

▲ページTOPへ