転生もので悪役令嬢ジャンル。ありとあらゆるパターンや設定が生まれるなか、この作品は群を抜いている。
文章で書くとややこしいのだが、ゲームの悪役令嬢レミリアに転生したエミは彼女のファンだったため幸せになるべく頑張るが陥れられ追放イベントが起
きてしまう。そこで目覚めたのは元の悪役令嬢レミリア!という展開。大きく描かれているのはレミリアとエミの絆であり、友情であり、献身である。そこの描写がかなり丁寧で、転生者であり悪役令嬢であるという設定も上手く使われている。この手の悪役令嬢もの特有の動機もあるにはあるが、その大本の気持ちとしてはお互いエミのために、レミリアたんのために!という純粋なものであるところも他の作品ではあまり見ない美点。
なお、流れとしてはエミの意思を継いだレミリアがメインとなるために、純粋でお人好しで善人なエミの演じていたレミリアであろうと存在しているレミリアなので、これはつまり悪役令嬢としての気高く賢く在る上にエミのヒロイン然とした思想を持ち合わせているというパーフェクトなヒロインが誕生してしまった。この主人公が最高にかっこいい。
ファンタジー世界においては世界設定がめちゃくちゃ重要でありそこが本質にもなり得るわけだが、そのへんも美味しく料理していると言える。この手の作品では恋愛がメインであることが多く、そういった文化や世界観はサラッと流されて中世ヨーロッパ統一でざっくりしていることが多いが、魔族や瘴気に魔法の力など、ヒロインの復讐に使うにしても納得出来るように組みたてられている。そのへんの細かい部分でも手を抜いていないところが物語として好印象。
この作品は小説版のコミカライズだが、おそらくこの作品を名作としてさらに昇華している作画の手腕も見事。中村明日美子先生の系統というか、線が美しいタイプの作画であるが、同じ顔であるエミとレミリアがすでに違う美しさとして描かれている。バトルシーンもあるが、「溜め」のシーンでの見せ方が美しく「動」の流れがきちんとしている。漫画の描き方に詳しくなくても、この技巧は目を見張るものがある。
普通に面白い作品を普通に上手い出力がなされていると感じる。ひとつだけ言うとしたらスマホで読む場合字が小さい気がする程度。作品としては批判する要素がなにも無い。手放しでおすすめできる、女性向け転生悪役令嬢ものの傑作。
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