日本なら攘夷か尊皇かの明治維新前夜。アメリカでも奴隷制廃止か存続かも争われた南北戦争。南の端っこと北の端っこはそこまでではないけれど、境目にある地域は大変だった。このストーリーは、ヒロイン父親の殺人事件の問題。アダムの余りに凄惨な事件の犯人
云々は、読者としてなんらスッキリしない。しかし戦争終結後の当時を象徴する、各所に無数にしこったごたつきに作者は触れずにはおれなかったろう。
冒頭の殺人事件は、顔見知りの犯行を匂わせつつ、「よそ者」を嫌う人間の性質にも鋭く切り込む。
コミュニティ皆が知り合いだから、余所者に排他的、というのは、小説でも映画でも散々語られてきたテーマ。これもあって、実は本作品の隠れた背骨は硬派と言っちゃ硬派。
他に疑う人は居ないから。みんな信頼関係で結ばれてる。
この容疑者は証拠不一致で無罪、これがヒロインの疑心暗鬼のもと。
でも、知れば知るほど好意が育つ。
ある意味、このシリーズ作品の4姉妹が4姉妹たる所以を作り出したのは、罪作りな冒頭の、彼女らのお父様。戦争が憎しみの連鎖を引きずってなかなか抜け出せない不幸とすれば、父親のあちこちに娘を作ってしまった精力的な人を愛する行動はその対極。
海街diaryを連想する4姉妹は、次第に同じ父親に可愛がられた素晴らしい思い出を共有していることから、結束していく。
アダムがなにくれとなくダイアモンドを(心配で)構うところが、二人の間に起こりつつある化学反応を起こす。ダイアモンドがどう対処していくのかにかかってきて、彼女の頑張りがアダムへ、警戒心ではなく愛情へ移り変わる。読む進める中で、HQという読み物を読んでる気分を実感させてくれて良かった。
先に読んだ「テキサスの真珠」のヒロインとカルのベッドシーンも、この作品のアダムのそれも、同じような台詞で、現代よりもそれが人生の大きなエポックメーキングであると、それとなく示している。
殺人事件が絡むだけに、こちらも彼の負傷シーンが出てくる。
似てるとも言えるが、シマ争いをするのが広い意味での戦争だから、無傷で終われない。
緊迫感をクライマックスまでうまく漂わせ、ロマンスも、キスのことを考えてば悩むヒロインや、妹達の恋愛サポート、彼への好意に正直になった後のヒロインの動き、など、見所を用意しながら成長させ、犯人との対決に入るので、掻き足りてない痒い所が残った感じはしない。
もっとみる▼