ゲームは始まったばかりだ、という言葉にも、計画が挫かれる都度返してくる言葉にも、私は自分がもしジェーンならそこには彼に魅力を感じない性質なので、ヒロインに対する彼のより真っ直ぐな愛情表現待ちの気分で読んでいたが、そこは手応え不足の終盤だった
。
「今夜はあなたの勝利ですね」とか、当人に断られレディ・セントンに「ワルツの許可」を求め直す積極性とか、微妙に策士然の(狡猾とは言わないとしても)持って行き方も鼻についた。
作家は私個人の好みに合わせている訳ではないから、世に送り出された作品の人物の人柄への不満で評価を下げることはしたくない。それにこの話では、フィリップも同じ夜、会場の中の別舞踏室で、レディ・ジャージーに同様の申請をし、それが慣例だとの理屈付けも暗に施されてる。
一般に一方的に女性が慎みや男性に対する従順を強要される時代、女性が賢く思われると損だからと、読みたい本を読むこともたしなめられた。それでも、男性の歓心を買う媚びを快しとしないヒロインは素敵だ。時代風潮に抗うのは、どれだけ小賢しいと思われる可能性があるか。出来る範囲の率直な言動に共感する。現代人としては応援気分。
どうかと思うような女性を同伴してあちこち出没する彼アレックスに、身辺の清潔感を持てないのはヒロインだけでなく読み手とて同じ。しかしレディ・デヌリーがいくら評判が高くなくても、いい大人が頻繁に連れ歩いたら少なくとも彼女の方はその気になる。お話の世界は彼女をイヤな女にして読者を心残りさせないが、客観的には彼女に不誠実な感じもしなくもない。
55%頁「レディ・ヴェリー」とあるところ「レディ・デヌリー」の誤りだろう。小さいところに目くじら立てたくはないが、誤字より失望は大。
ゲームメーカーとしてのマウントを取りに来ているかのメイン2人のやり取りの中に、皮肉や遠回しの言葉遣いの妙が巧みに出ていて、ロマンスストーリーのメイン二人のやり取りでなかったら、もっと面白がれたろうとは感じる。
策を弄する割にフッと単刀直入に質問、親交はまだこれからの状況なのにポロッとフランクに語る、といった行動が整合的に受け止めきれない。ヘンリーと公爵は、特別なミッションでもあるのかと思わせながら、テレーズの件では肩透かし。
以前読んだ「意外な求婚者」(1999ジュリア・ジャスティス)「大富豪の醜聞」(2008サラ・モーガン)と一部だけ趣向が被る。
もっとみる▼