愛を知らない二人が、夫と妻を演じる。
信じられるのは、互いの唇の甘さだけ。
レイラは母亡き後、横暴な義父に虐げられてきた。
狭い部屋に閉じ込められ、食事もろくに与えられない。
ビジネスの一環として、多額の金と引き替えに、
見ず知らずの男との結婚を決められても、レイラは逆えなかった。
結婚すれば、義父から逃げられる。誰とだってかまわない……。
強欲で好色な老人を想像していたレイラは、現れた相手を見て驚いた。
たくましくセクシーで、危険な雰囲気をたたえた男性。
この人が、多国籍企業経営者ジョス・カーモディ――私の夫なの?
不覚にも胸がときめいたが、彼はレイラを蔑んだ目で見ている。
“金の為なら、誰にでも身を委ねる女なんだろう”とでも言いたげに。■どこかクラシックで王道な世界観が持ち味の若手人気作家A・ウエスト
による政略結婚ロマンスをお贈りします。愛を知らないヒロインと、
幼少期のトラウマから愛を信じられないヒーロー。夜を重ねるうち、
心までひとつになってゆくのですが、それを愛とは知らず……。