現代においては、もはや民俗学の新研究など不可能なんじゃないかと思ってしまうほど、世の中は変化し多くのものが消えた。
本の電子化により民俗学の本もどんどん消えているなか、この本の内容は1985年のものだが、だからこそ面白い。個人的に、民俗学
的なものを肌身で感じられた或いは記憶していたギリギリの時代じゃないかとおもうのだ。もともと民俗学の本は古いほど良いとおもっている。
内容は広く浅く読みやすい。語られた歴史の裏側に消えた人々、支配者にまつろわぬ人々の住む世界を「闇」住人を「鬼」と呼び、それらを概観する。深く突っ込んだ内容ではないが、取り上げた話題は多い。興味深いものもずいぶんあった。ひとつあげると、内藤さんの「東海道五十三次呪術装置説」は初めて聞いた。検証したわけではないが面白いとおもった。
「闇」は同時に他界のことも指している。光ばかりが溢れるようになり闇が消えたからこそ人々が「闇」を求めているのだ、という小松さんの言葉はそのとおりだとおもう。多くの本が消えてゆく時勢にあって、小松さんの本が生き残っている理由でもあるだろう。
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