ともに行くのは笑顔が似合う死者の少女――。
これは終末の世界で始まる、夜の旅路の物語。
全世界を襲ったゾンビパンデミックから5年後――、人類はほぼ全滅していた。
荒廃した東京をひとりさすらう少年ユキトはある日、「死ぬまでにやりたい10のこと」のため北海道を目指し旅をしている少女エコと出会う。いつも笑顔で明るい彼女だが、その正体は他に例のない“ゾンビ化していないゾンビ”だった。
彼女の死を見届けるため、人類の敵とふたり旅に出ることにしたユキト。決意を胸に、朝日とともにいざ出発しようとするとエコがかわいく抗議の声を上げた。
「ゆっくんは、デリカシーがないなあ。支度はすぐだけど、昼間は出たくないの」
尖った口先が、つまらなそうに続ける。
「腐っちゃうから」