本作「愛の別荘」は上・中・下の三部の短編に分けられ電子書籍で配信され、三部あわせて中短編とも言うべきボリュームの作品となっている。さて内容は、上巻開始早々に不倫の絡みがスタート。珍しく助走らしき導入部がない。登場人物はヒロインと、相手である
アラ還(藍川作品に数えきれないくらい頻出する設定)の二人のみ。その両名の関係についての説明はプレイに並行して効率よく(手っ取り早く)記述され、ほぼ全編にわたって男女の営みの描写に終始する。文章表現のひとつひとつは同氏の作品でよく見られるものの寄せ集めという印象で、この点で作品群の中では際立った個性はないが、道ならぬ恋に踏み出す女性心理の活写ぶりにはなるほどと頷かされる。例えば相手の男が多数の女性遍歴を経て、今度は自分との関係を持つに際し、自分が大勢の中のひとり見られているだけかもしれない懸念を抱く女がいかにして自身と折り合いをつけるか、といった点などである(具体的な内容は読んでのお楽しみ)。なので地味ながら異色作と云える。はじめから終わりまで性描写という濃密さも評価する向きも多かろう。一方でプレイ内容はオーソドックスの積み上げである点などを考慮し、星は3つとした。
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