出会うきっかけとなったパリの舞踏会で踊る直前から踊り終わるまでのシーンが私は気に入った。舞台が移り変わって、二人がギリシャに行って島を彼アンゲロスの住まいまで進んで行く場面の、島の自然を想像できるのが良かった。
私はハピエンを読みたく
てハーレクインを読んではいるが、全体として「シンデレラ」ストーリーが多すぎるところは率直に言って余り評価していない。安易で、結局、相手のステータスにただ乗りの、拝金志向の、女のサクセスストーリー。それも、他人の築いたものであって、ヒロインの方は性格がいいというのがほぼ唯一の美点だったり。実は美しいんです、という、密やかに咲いてたのが、見出だされることによって、他人から称賛される美貌となって、読者の変身願望を叶えてもらう。承認欲求を書物で、というか。戦闘のない先進社会のひとつの武器がお金だから、完全否定などしないが、「大富豪」「億万長者」とタイトルに入るものが多すぎる世界観にはうんざりしている。現代の「王子様」に相当するのは、それか、王族系や貴族の爵位。現代物でオンパレードの、大量発生の現代の王子様たちは一様に警戒心も強かったりして、その半ば定型化してるところも、もう敬遠気分。ただ、昔、新興起業家で成功した友人を持つという人が、女に対する猜疑心が強く、成功前に将来の成功なんて予想してなかった頃に知り合った女で探せたらよかったと彼が話していた、と言っていた。後年ハーレクインを読み出したとき合点が行った。お金が嫌いだなんて人はまず居ないし、手にしている水準を落としたくないのが人間だし。それでも、ヒロインは彼のことが好きなだけであって、金持ちになりたい訳ではない、だなんて設定も、その向こうにある読者への免罪符をただ打たれているだけの気がして、偽善的。もともと小説は虚構の構築だから、リアリティー比率は命だろう。
ところがこのヒロインは、リッチな彼のお財布を一切使わず、自力で、ドレスでザ・変身、を成し遂げる。そして日々も徹頭徹尾、人のお金で生きることを拒む。拒み倒して、ついに彼は、安物(だという)指輪を用意、彼女が働くプランを立てて来る。そこでやっと二人は未来に向かうのだ。
当初、また、大富豪どうのってタイトルだ、という目で見ていたが、私の膨満感を解消させた気持ちよさは否めない。
終わり方も頗る良い。ドラマはこう終わらなくては。蛇足無し歓迎。
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