県立図書館で稀覯本を担当していた若手司書・詞乃は、北関東の山深い旧家の番人・燎一に「先代の蔵書整理/半年契約の司書職」の名目で、地下三層の段書庫・禁書院へ連れてこられる。あるのは外界との接触遮断、写本作業と閲覧の独占管理、現の世はお前という物語をいつか必ず汚すという物語論の説得。書き写される物語そのものが檻となり、詞乃は山を下りられなくなる。「壊れている」と評される彼は、彼女の前でだけ別人のように甘く、絶対に手放さない。お前の続きは俺だけが書き直す——その独白が、恐怖を安堵へと反転させていく。書物ゴシック・救いある執着溺愛。