紙漉き十市(五) 隣領の紙座に四軒とも断られましたが、峠の茶屋に樽をひとつ置いたら、見知らぬ客が十日ごとに銭だけ置いていきます(帆足いさな )の注意事項

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紙漉き十市(五) 隣領の紙座に四軒とも断られましたが、峠の茶屋に樽をひとつ置いたら、見知らぬ客が十日ごとに銭だけ置いていきます 発売予定

830pt/913円(税込)

8/16(日)発売予定

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作品内容

【この作品は生成AIを使用しています】

宿場と郡と城下。三つの売り先は去年のうちに通した。通した先はどれも去年と同じ枚数のままで、そこから先が無い。年が明けてからの入りが去年の七分しかないと千枝の帳が告げたとき、十市は東へ峠を越えることに決めた。四つ目の売り先を探しに行くためである。
須賀十市、三十一。三太と二人で半紙十束、二千枚を担いで鳥越峠を越え、隣領の城下・紙屋町へ下りる。ところが店は四軒とも首を横に振った。座の紙でないと、この町では売れないのです。
真室紙座の肝煎・犬飼五平、四十九。半紙一帖、四十文。これが町の値です。この値より高くも安くも売らせません。飢饉の年も四十文でした。──では、漉いた者にはいくら渡るのか。十二文です、と犬飼は答えた。四十文と十二文のあいだにある二十八文が、どこへ落ちているのか。それを訊く前に、十市は入座を断る。
帰り道、十市は峠の茶屋の板囲いに十束を置き、傍らに樽をひとつ据えた。半紙一帖、三十文。番はいない。銭は樽へ入れてもらう。十日で三十七帖が売れ、樽には千五十文。ちょうど六十文足りない。その六十文をどう帳に書くかを、千枝は決めなければならなくなる。
茶屋の主の弥兵衛は、六年前の夜にこの板囲いへ紙を置いていった男の顔を覚えていた。十市が都を出た年のことである。置いた当人のほうは、その夜のことを何ひとつ覚えていない。
紙座の書役・鹿野音羽、二十一。数を読み上げるときだけ声が通る娘で、座の帳の裏にもう一冊、値を決めるための帳があることを知っている。十市と千枝は城下の座下の漉き手を一人ずつ訪ね、その手で漉ける値を書かせて回った。二十二文、二十四文、三十文、三十六文。幅は十四文。十人の値が十通りあることを、この町の誰も見たことがなかった。
やがて座は楮そのものを押さえにかかる。山方と三年の約束が結ばれ、十市の手に楮が回らなくなる。楮が無いなら、楮でない紙を漉けばいい。三椏、そして雁皮。
水無月の朔日、紙屋町の四つ辻に、十人と一人の値札が並ぶ。
三十年前の帳の隅にあった「漉き手一同にて相定め候」という一行を、もう一度この町の現在にするまでの一年。
【紙漉き十市 全十巻】一~四巻=村と領内/五~七巻=都と国/八~十巻=国の外。本巻から第二部に入ります。

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