海沿いで居酒屋を営む10歳年上の店主に長年片思いをしている男が、積年の想いに終止符を打とうとしたところから新たな展開が始まる恋のお話。
とにかく、最初から最後までずっと切ない想いが続きます。諦めきれない隆太の想いが一途でまっすぐで不器用で
熱い。いっそ、二人が結婚していたら、最初の告白で拒絶されていれば、と諦めポイントはたくさんあるのに、それらが全てスルーされ、でもはっきりと名前のある関係にはなれない。焦って自分から追い込んでしまえば終わってしまうかもと考えると、身動きも取れない。ただただ想い続けることしか出来ない隆太の気持ちが、切なくて苦しくて胸が痛かったです。
また、尚希の虚無感や寂しさも良く伝わってきました。過去の思い出を紐解くと、尚希はちゃんと愛を伝えてきたのに想いがすれ違ってしまったのが切ないです。そして、大人だからと何でもないように振る舞う姿が痛々しく、最終的にはいつも我慢しているような姿が儚くわびしく見えました。
そんな二人の熱くてどうにも出来ない関係が、夏が終わる寂しさと相まってどんどん切なくなっていくように思いました。でも、夏が終わって人々の熱気がなくなっても、日常という日々は必ずそこにあって、隆太が溶け込んだ日常に尚希が愛しさを感じ、自分の気持ちもきちんとそこにあることにゆっくりと気付いていく、その過程がじんわりと心に沁み入りました。隆太がずっと伝え続けた想いが叶って、何よりもホッとしました。
お話の内容や登場人物の心情と、夏の海辺という設定がとても上手くマッチしていて、さすがウノハナ先生だと思わせてくれる作品です。切なさが心に染みる名作です。
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