加東先生、SF寄りの2作品。
かなり好きでした。
先生らしさはそのままに、更にエッジが効いている感じ。
作品の感想で話の結末が見えないとか、起承転結がないと評される事が多い気がします。
それと、背景の描き込みが少ないとの声もあり
ます。
表紙の主人公はまるでアンドロイドの様。
一見無表情に見えますが、そうではありません。
読みながら自分なりに感じた色を付けてみたら、
次第に温度も匂いもしてくる。
そう、これはおとなの塗り絵。
簡素に思えるストーリー展開。
しかし例えば同僚と肩がぶつかるシーン。
あの後の主人公の1コマで、
彼の人物像や背景が一気に伝わる。
そういった1コマ、いや1つの視線すらこぼさず読んで欲しい。
彼と彼が創り上げた、どこでもないどこかの空間。
そこでは辻褄合わせも不要。
必要なのは恋する2人。
ストーリーはページが有限であるから、
ある程度の着地点を設けられているけれど
それは物語の通過点でもある。
この2人の行く末がどう転じるか。
この切なさに浸っても良いし、
予想だにしない幸せを思い描いてみても良い。
ちょっと人とのやり取りに、嫌気がさす程では無くとも
何となく疲れた時に加東先生が無性に読みたくなる。
とてもリラックスできるんです。
決められた結末が無いということは、
先を無限に考える余白が残されているということ。
今日の自分は正しかったかな、あの発言で良かったかな…
そこに答えを出すよりは、心を柔らかくしておきたい。
私に必要な余白です。
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