女性を愛すなんて自分には無いことと決めている男性はHQに多いが、人を愛さないと決めている女性のほうは比較的少ない。愛の力で女性が男性を目覚めさせるのが一般的傾向。
この物語はヒロインの鉄壁の、愛を拒絶する心を、男性側からの愛で覚醒・養
生させる話。
黒使いの名手の絵を楽しむ。
レオニダスが素敵に見えてしょうがない。
HQお得意の誤解も無ければ、男性が傲慢ということもない。最初から、どうしてヒロインは?、という疑問を当方の頭に浮かばせておいて、レオニダスは気持ちが帰ってきたらもう只管ヒロインに最上級の心配り。
ヒロインのトラウマ、読んでいる私自身苦しく苦い古傷を呼び起こされ、共感した。
私は子どもの頃、インコの餌が殻だけになっていた事に気づけず、雛を一度に5羽死なせてしまった事が長年のトラウマとなり、私は子育て出来ないんだろうと悲観していた。自分を責めて、私には子を持つことは許されないんだと。
死なせてしまった苦しみというのは簡単に拭い去れない。忘れられるものではなく、自分のしでかした取り返しのつかない不注意が自分を奈落に突き落とす。 あのときなんで?と、繰り返すその巻き戻せない過去への執着。自分がああすればあんなことにはならなかったと、こんな自分は失格者なのだとして許せない。そんな長い冷えたトンネルでヒロインは膝を抱えて、誰にもこの事を話さず(話せず)大人になってしまった。
レオニダスは、打ち明けられる人になろう、と考える。
彼の誠意はついに通じた。
押し込められた感情は、自分が母になることで変化する。母になるとは、子どもの立場しか見えなかったこれ迄と異なる、親という新たな立脚地点を得ること。同じ景色の両側が反転現象で異なって見える。それを体感した私は強く共感。
子どもは待ったなしに存在で訴えかけてくる。そしてヒロイン1人だけの日々ではない。頼もしい彼の傍らで安心して出産を迎えられたこと。いよいよヒロインは心にしまっていた数々を語る。ショッキングな過去を聞かされて、彼はやっと彼女が見せてくれた彼女の深い内側、それを冷静に聞き役に回って受け止め、愛は更に深化した。
もうこれは、レオニダスのロマンスストーリーと言っていいかと思う。彼には衝撃の、想定外の、ヒロインの肘鉄からのこと。そして更に驚く棚ぼた逆転の友情結婚の申し出へ。新局面で彼は自分の度量を、試されたのだ。
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