淡々とした静寂の中で、逝ってしまった兄と、残された弟と親友の3人のお話です。
セリフ回しも展開の仕方もまるで小劇場での演劇を観ているような突然感、省略感を感じましたが、それがこのお話にすこぶるマッチしていて独特な空気を醸しています。
導入部は、何故?何者?何の為に?と謎でたたみ掛けてきます。と同時に語り部である弟のコンプレックスと悔恨も浮き出してきます。ここで一気に物語に引き込まれてしまいました。
1番の謎は、兄はなぜ命を絶ったのか?
それを知る為の旅路であり、詰まる所、兄の本当の姿、思いはどんなだったのかを確認する旅でもあります。それが図らずも故人への供養となっています。
自己を知る手段として、近しい故人との対話はとても有効で意味が有るものだと常々思っています。二度と今生では会えない人と真剣に向き合うと、なぜか自分の形が明確になります。
今作はまさにそれを具現化して頂いた作品でした。
大きな喪失を乗り越えるには、時間だけでなく新しい熱も必要です。
今作はなぜ好きになったのか、なぜ絆されたのかという所ではなく、なぜ必要だったのか?を描いた作品だと思います。
無駄な枝葉を取り除いて、三人三様の自分を見事一冊で着地させたのは素晴らしいと思いました。
えっちもステキでした。祈りと感謝を感じながらも静かな熱を十分に孕んだ2人の絡みが美しかったです。
修正は白抜きボカシでした。
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