作家こだわりの特殊設定がかなり面白くて、その制約の下でキャラ達が精一杯過ごすのが独特の切なさを呼び込んで、新鮮な感触のストーリーだった。
絵だが、人の描き分けが、途中髪型変更も加わって難解(星の悩みどころでもあった)。それにまた吹き出しの
配置など紛らわしさもあった。鼻も目も、色遣いも、アングルも、個性といえば個性、しかし中には、私の主観からは正直厳しいものもあった。
強烈に強い作中のルールというか、強引気味な環境設定の勝利だなと思う。
白鍵(=雪)は連続し、黒鍵(=墨)はジャンプして存在する。タイムトラベラーの降り立つ年は離れてしまうことが避けられない、つまり非連続。
転生者には転生の目的がある、そして個々の生を全うする、連続の生。其処に私には染み渡るように響いてくるものがあった。記憶保持者を登場させたり、転生者が思い出す時期の定めも、実に楽しい。
私も自分の生の限りを覚えることとなって、日々時間を意識するようになっているが、一方で、人が亡くなったときに身内が身近な小さい生命に故人の生まれ変わりの姿と信じるさまを、もう何度か立ち会って来ており、私自身、自身のその後、というのを考えなくもない。その中で、果てしなく転生があるのだとしたら、それは「命は有限である」、という点からは、矛盾がある。
タイムトラベラーの話は、なかなかパラドキシカルな難点を乗り越えられないことも多いが、この話、スルーしようと思えば独自ルール等でねじ伏せられてしまいそうで、realityを必要としないのが煩わしくなくてよい。
しかし、こうも高密度で出現するタイムトラベラーと転生者、随分思い切ったものだなと思うのに、読んでいると其処もそのまま受け入れられるすごさ。
名前がまたまた凝っているといおうか、植物由来だらけなのも絶妙。植物は、生命を連続させるために、種子を飛ばす。ということは、時間の連続も、種子の形態での時間のジャンプという不連続も、どちらも叶える、本作に沿った存在だからだ。
性、本作が異性間に決着したのは作り手の意思と感じる。その反面、それがまた、性や世代を超越した人と人との関わり合いも途中経過押し出して来ていて、いじれる余地があるのというのも作家冥利なのだろう。
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