ヒーロージュードとヒロインカライナとの関係は、密輸犯罪逮捕まで王手をかけられた状態からのスタートだ。甘い関係を重視するなら、物語は捜査官から愛しい女性の家族に事の真相を伝えて 密輸を止めるべく諭し、止めさせ、両岸の人々に安寧をもたらしハピエ
ンへとの順路となるだろうが、この物語は違う。もう疑いという域は越えて 逮捕へ秒読み段階に入っているのだ。そんな中で捜査官ジュードは容疑者の妹カライナを共犯の容疑で捜査するべく近づいたが、本意に反れて恋におちてしまう。しかし、物語は周到で、彼女が共犯ではないらしいとほぼ確定段階まではその想いに加速感は無く、むしろ捜査官としてのモラルが感じられるほどに職務に徹している感がある。そしてそれを感じ取った時、彼女の家族への影響と彼女の立ち位置と、自分の立場に悩み始めるのだ。展開は犯罪のそれを追求していくことよりも、2人の愛の行く先に思いを馳せ、それぞれの家族との関係性を重視した作りで、犯罪が及ぼす波及効果を 終わってしまう家族、生まれる家族を対比にして上手く作り出していると思う。カライナにとっては、16、14年と離れた兄達の行動を 想像すらしなかったと思う。守られているというよりは、隔絶とも隔離ともされている。ここには、金を稼ぐ家長があって、女は家庭の事を考えていれば良い的な背景まで見え隠れする。真実を愛する男性から語られた彼女は青天の霹靂だったと思う。その絶望は、以前婚約者を亡くしたショックをも超えるものとして彼女を打ちのめす。が、しかし彼への思慕も同じように募っていく彼女の悲しみや苦悩が十分に伝わる。犯罪を犯したからといって、絶望の淵にいる家族をしり目に自分だけ愛する男性の下へ行くことには罪悪を感じているカライナに父が言う「親は子供の幸せを1番に考えるものだ」けれど、それは子供にも言えることで「自分の幸せも大事だけれど家族の幸せも大事」。犯罪を取り締まり若しくは断罪する側の人間と犯罪者またはその身内との幸せはあり得るかという恒久的な問題に1つの答えが導かれている。これには賛否両論あるであろうが、そういうHQが出来上がっていた。
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