よしなが先生の新作である本作は、環(たまき)と周(あまね)という名前の、それぞれ性別も時代も役割も違う主人公が織りなす大きな意味での愛を描いたオムニバス短編集。以前レビューした先生の対談エッセイ「仕事でも、仕事じゃなくても」にあった、自分が
書きたい恋愛に限られない人が人を愛おしく思う気持ちを描くことができる時代が来た、という言葉を体現したような作品の数々。先生が言っていた大人による大人が読んで読みがいのある漫画が生まれたこと自体、感慨深い。今日まで1話が無料で今3話まで刊行中。
どれも良いけれど、どれか一つ、と言われたら3話かな。一見不憫な、余命わずかな看護師とご近所の男の子の物語。これが、45頁の短編ながら、読んでいる間に人が生きる意味を見出すのはどのような瞬間なのかを考えさせる深い話で、読みながら、子育てをしながら我が親が自分をどう見つめていたのかに気付いたこと、同時に自分を頼る幼な子を育てることで感じた生きがい…など様々な記憶や感情が押し寄せる逸品でした…
どの主人公達も、その心情描写が自然で共感でき、それゆえ、その人を巡る愛がその人生に与える影響が胸にしみる。これも、先生が語っているように、先生がどの人物も、自分と地続きの人だと思って描いているからかな。は〜、泣きすぎて頭が痛い。出会えて良かった。ただただ、よしなが先生に感謝。
*2023.9.29最終話で、これまで明かされていなかった環と周の関係の因果が明かされて、涙を流しながら第1話から読み返すと、確かに環は周の人生を豊かにするように存在していて、第5話の環の思いの深さが偲ばれる。同時に、生きていたら幸せなことがある、人が人を思う気持ちこそ尊くて愛しいものなのだというよしなが先生のメッセージが作品に込められているように感じます。余韻が深い。よしなが先生に心から感謝です
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