普通、男の人は、連れ歩いても恥ずかしくない女をと思うものだろう。
しかし、ジェフリーは、くじ運(?)の悪さから結婚することになった妻を、外-兄夫婦のとこだけど-に連れ出して堂々としている。正確に言えば、そのことへの後悔もしたりはするのだが
、基本妻の事を悪く言ったり疑ったりする輩には黙ってはいない。魔性云々と仕立て上げられた評判にも敢然と向かう。
武術にも優れながら、読書家として豊富な知識を蓄えて、城や領地運営のマネジメント能力も申し分のない、知的で温厚、冷静なのに熱い心も持つ男、ジェフリー。
そんな、ちょっと勿体ないのでは?と、思わせる流れで結婚させられた相手が、彼に信頼を少しずつ寄せていく。その相手、本作のヒロインは周囲を敵に囲まれるようにして育ってきた。その敵たらしめる幾つかの人物を、彼は一人、また一人と追放などして片付けていく。
ヒロインが人を遠ざけ悪態を巻き散らかしてきた原因をほぼそのすべてを取り除いて、彼は本来の彼女を引き出した。
このストーリーは、彼の働きかけの成果によって二人が愛を通わせるようになる展開なのだけれど、母の死後、武器携行を常としてきたヒロインが彼を信頼するようになる経過の描写が良いところだ。
文字でエロティックと表現するほかに、髪をさわられるヒロインと、髪を触れて楽しむジェフリーと、二人の感情ののぼりたつようなさまを、絵でもっと余韻ぶかく味わいたかった。
髪がエロティックなものとして二人の関係の節目に扱われる以上、この場面は最重要だろう。
勿論、頁数割いているし、この話のなかでの扱われ方を汲んでのコマのとられ方なのは充分わかる。気合いも入っている。
それでも、読者として私は、ここの盛り上がりに欲がある。髪をさわる方の高揚、触られる方の恍惚、二人の間の特別な空気を、タップリここで吸っておきたいのだ。
ジェフリーが、ヒロインを信じるシーンにヒロインが喜びを見せるシーンがある。
二人はもうそこまで信じあうようになったことを読み手が知る一里塚シーンなので、これまでの道のりを思わずにはいられない。
物騒な話だったが、戦いや流血が珍しくもない時代の、優雅になど生きていられない状況で、陰謀も横領の類もあるなかで、ここに確かな愛が育まれたことを見届けられて、読後、なにか心の最奥が蘇生したかのような気分になった。
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