読み放題。とても良作でした。
冒頭から事件に巻き込まれる主人公たち。
サスペンスアクションなのかしらと思えますが、物語は予想外の方向に展開していきます。
この本は性同一性障害の本ですという身構えたところがなく、薫や先輩の人柄に
惹かれて、そういったテーマを読むつもりで無くても最後まで読ませる力のある作品です。
そして薫目線に偏ることなく、先輩目線からも描いている事が、難しいテーマでありながらハードルを下げ、結果として性への理解を深めることに繋がっている様に感じます。
本作は友として、親として、恋人としてなど、本当に様々な視点から性同一性障害というテーマを描いています。
それぞれの立場に自分を置き換えて、私ならどうするだろう、どんな気持ちだろうと考えさせられました。
この様なテーマに触れる際、同じ立場の人間でない自分は、その苦しみを本当の意味で知る事は出来ないのだろうという後ろめたさを感じることが多々あります。
しかし、本作を読んでいる間は、いつの間にか私も一緒に悩み、葛藤し、それでも恋する彼等の仲間となっていました。
問題は次々やってくるし、これからどう進むべきかだって分からない。それでも彼等の行く先が明るいものにしか思えず、読んでいる私すらも前向きにしてしまう。そんな作品でした。
主な登場人物である3人の関係性が本当に素敵です。愛に溢れ、性への更なる可能性を提示してくれたラストには驚き、爽やかな感動を味わいました。本当にこの作品を読んで良かったと強く感じました。
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