巻頭カラー頁の色づけが美しく、物語に自然に導かれて、ヒロインの逃避行を見守る気分で読み進む。
やり方は大胆だけれどよく考えて選ばれた花嫁。
HQに多い戦地帰りの勇敢な元負傷兵の勇ましい跡を見ても怖がらないヒロインと、対照的にそれ見て逃げ
たかつて大佐の近くにいた女と。
「結婚は冒険なのよ」「幸せになる保証なんてないの」
まさにその通り。結果が絵に描いたようなものではなくても、結婚に一歩踏み出したことそのものの、思いきりの重要性。劇中の言葉が上滑りしていないと感じた。
と同時に、外見を生理的に拒絶していないこと、ヒロインの起こした面倒事へ対処するときの様子でわかる人柄、そこから、この人となら行けるかもしれないとのヒロインの直感は真に正しい、大した判断力だと思う。初めてのお食事時間にヒロインが、自分を見る彼の目に動かされ、また、ヒロインが彼のことを、自分が傷つくのを恐れているのだと見抜くその理解力が、二人の決して悪くはない相性を裏打ち、出逢いの妙を上手く演出している。
どちらにとっても大きな決断であるのに、屋敷の使用人達(元部下達)の援護射撃が微笑ましくてジンとなる。暖かい気持ちになってくる。
借金云々の父親は回想で登場、悪役のおば様は図らずもハピエンの立役者。おまけに、身をやつしてはいても実はーー、という、正体明かして鼻を空かす黄門型ストーリー。
使用人たちはディズニー「美女と野獣」の食器や家具になった者達のように愛嬌がある。
しかも、反則の「悪役」登場の結末。
なにこれ。。
こっちが好みと思う読者も多いはず。
どんでん返しではないけれど、この展開は、ご都合主義以前に、ストーリーが最早この着地のために周到に練って作られた前置きに思えてくる。
しかしレディ・フェネラはこの先どうなる?
確かに心配だ。
それに、最後まで来ての、マシソン卿。ストーリー、なんかあったっけ?と、HQをひっくり返し始めた。あとを引く作りをしている。
追記)上のマシソン卿が出てくるHQのタイトルは「忘れられた婚約者」。次に読むものが決まってしまった。
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