主人公の岸はめちゃめちゃアンチ医者の人間。しかし医者をやってる。
性格も歪みに歪んでいて、子供にまでデリカシーが死んでいると言われるほど。しかし、病理に関する知見は誰にも勝る。
病理という特殊な医者ゆえに偏見の眼差しを向けられ、臨床医か
ら冷遇されるものの、医者として自身の責任を全うする。
ストーリーも大変よい。話一つ一つがとても深く、特に岸の過去にも繋がっている、10巻の末期癌の少年の話は最高である。演出、言葉選び、どれをとっても他のどの漫画に引けを取らない出来である。ところで、このストーリーの一つの主題として、『嘘』がある。多くの医者は患者の精神を守るためといい、患者に嘘をつき、また患者も周りに心配かけまいとして嘘をつく。しかし、その嘘は誰を幸せにするのか。ただ、自身を苦しめるだけではないか。岸が過去に得た体験があるからこそ、2巻に新人病理医宮崎に「その紙には絶対に嘘をかくなよ」と言っていると考えれば、その彼の言葉の重さを理解していただけると思う。しかし、百聞は一見にしかずである。ここで触れているのは全体のごく一部に過ぎない。
是非、多くの方に読んでいただきたい。
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