■『天ない』のおかげで人見知りを克服!
――吉木さんは筋金入りのマンガ読みでいらっしゃるそうですが、中でも“人生を変えたマンガ”というと?
「矢沢あい先生の『天使なんかじゃない』です。王道の学園ラブコメディで、1年生しかいない新設校が舞台なんですけど、主人公の冴島翠ちゃんは純粋で正直で情に厚くて、すごく人望があるので、生徒会長に担ぎ出されるんです。彼女と生徒会の個性あふれるメンバーの成長と恋愛模様を描いていく、女の子なら誰もが心熱くなるマンガなんですけど、わたしは特に友情を描いたシーンが大好きなんです!」――例えばどんなシーンですか?
「少しネタバレになりますが。生徒会役員に、お嬢さまで頭もいいけど性格がきつくて友達がいないマミリン(麻宮裕子)っていう子がいるんです。翠ちゃんは持ち前の天真爛漫な性格で徐々に仲よくなっていくんですけど、マミリンは瀧川マン(瀧川秀一)っていう誰もが憧れるかっこいい男の子にずっと片思いしてたんですね。2年生のときに生徒会で劇を披露する会があって、マミリンと瀧川マンが白雪姫と王子さまの役になるんです。でも実は瀧川マンには新入生の(原田)志乃ちゃんっていう彼女がいて、マミリンもそのことは知ってるから、志乃ちゃんの目の前で恋人役を演じるなんて屈辱だって言って当日にトイレにこもっちゃう。翠ちゃんは一所懸命励ますんですけど、マミリンに“そういうおせっかいなとこ大嫌い!”って拒絶されて、それでもトイレのドアをよじ登って“あんたがあたしを嫌いでもあたしは好きよ マミリン!”って言うんです(笑)。そんなこと言ってくれる友達がいるなんて、すごく幸せなことじゃないですか!!」――いいエピソードですね。吉木さんのアツい語りでさらにグッときます。
「あと、マミリンと翠ちゃんが一緒に図書館に行くシーンも好きです。翠ちゃんが絵本を読みながら素直に泣いたり笑ったりして、帰り道に“あたしは将来は美術家になりたい。マミリンは?”って訊いたら、“あたしは冴島翠みたいになりたい”って――すごい。そんなに影響を受けて変わるものなんですね。
「大人になっても、人間関係がギクシャクしたり、変なプライドが顔を出したりとか、いっぱいあるんですけど、そういうときにあらためて『天ない』を読むと、こうして素直に誠実に接すれば絶対に人って心が動くんだよな、って思わせてくれます。すり切れるほど読んだし、今も大事にしてます。読んでなかったらこういうお仕事もしてないと思いますね、たぶん。」■マンガには人生のヒントがいっぱい
――他に好きな作品というと?
「『バクマン。』(大場つぐみ/小畑健)が好きです。親友二人でマンガ家を目指すお話なんですけど、片方の主人公のシュージン(高木秋人)くんがヒロインのあずき(亜豆美保)ちゃんに、“マンガ家は博打だから正直うまくいくかどうかわからない”ってポロッと言うんですね。そしたらあずきちゃんが“頑張って努力して前に向かって進むことに吉も凶もないよ、自分の糧になるから絶対にやったほうがいい”って。ちょうどわたしも芸能界頑張り始めで不安な時期だったので、その言葉に救われました。確かに頑張ることに吉も凶もないし、もしうまくいかなかったとしても絶対に自分の糧になる、そのとおりだ!って思って。そのシーンに付箋を貼りました(笑)。人生のヒントがマンガにはいっぱい詰まってて、“こういうとき翠ちゃんだったらなんて言うかな”とかすごく考えるんです。『天才柳沢教授の生活』(山下和美)も好きなんですけど、教授だったらこういうときはどう対応するだろう、とか。何かあったとき思い出して参考にすることが多いですね」――男女どっち向けでも読まれますか?
「はい。少年マンガ、少女マンガ、青年マンガ、あと手塚治虫漫画全集も全部持ってます。中学のとき美術室の本棚にあって、早く描き終わった人は読んでいいことになってたんです。わたし、絵は得意なほうだったので、急いで描いて“先生できました!”“んー……まあいいか。読んでいいよ”“ありがとうございます!”みたいな。『ブラック・ジャック』などの有名な作品はもちろん、『時計仕掛けのりんご』とかマニアックなものも……『奇子』とか」――中学生で『奇子』はヤバいですね。
「すごい好きで、今も持ってるんです!トラウマになりましたけど(笑)、けっこうインスパイアされましたね」――最近読んだもので面白かったのは何ですか?
「おすすめは『ダンジョン飯』(九井諒子)ですね。いま料理マンガがブームですけど、なかでも異質というか、ダンジョンの中の魔物を使って料理を作るんです。歩き茸の水炊きとか、マンドラゴラのかき揚げとか。リアルなレシピが載ってて、それがおいしそうに見えるんですよ(笑)。ゴーレムの体の土で畑を作って、無農薬の野菜を育てたり」――料理マンガブームと関係あるようでないような(笑)。
「しかもある意味ダンジョンとも関係ないですからね(笑)」
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吉木りさ |