「だからこわくてしかたないんですわ」大島弓子先生の著作の中でも屈指の名言と思います。自分ごときがレビューするのもおそれ多いですが、何が面白いかわからないという低レビューの方にお答えできれば、と。すみません本当に恐縮でした。端的に言って前述の
セリフに何か思うことがあれば大島先生の紡ぐ言葉ひとつひとつに打ちのめされ、この作品は名作と思うでしょうし、何も引っ掛からなければ縁がなかったと思うしかないかと思われます。自分は、作中、衣良がお化粧したところを男性に見られたことに対しひどく取り乱すところがとても印象的です。すごくよく分かるのです。ただ、それを自分は外に表現することは出来なかったし、ただただ自分でも理由のわからないどうすることもできない羞恥と屈辱に耐えました。衣良が取り乱してくれて、あああれは取り乱しても良かったんだと何年も経って救われました。自分だけが物のわからない子供なわけではなくて、誰しもある部分なのだと教えてもらえることは大変な慰めになりました。他の方もレビューでおっしゃる通り、こちらはおとぎ話なのです。ひとりの少女が崖から落ちないように周りの優しい人達が心を尽くしてくれるのです。何がおとぎ話かというと、現実には崖から落ちそうな少女を助けてくれる人に出会うことは難しいからです。「またあしたね」そう言ってミルクを渡してくれる人は現実にはいません。それでも、衣良がいるから1人じゃないと思えるのです。明日がこわい夜が来たところで、どうしようもないけれど衣良の話を読んで眠って朝が来れば、不安よりも何よりも寝不足の苦痛が自分を生かしてくれるわけです。(寝不足の苦痛は不安を吹き飛ばしてくれますね!笑)。自分の中にあった言語化できないどうしようもないものを、言語化して見せてもらえることはとても安心するのです。自分だけが考えることじゃなくて、誰しもあることなのだと、それを教えてもらえて心底安堵したものです。
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