ハーレクインは、妊娠や出産を、形ばかりの結婚に踏ん切る二人のきっかけとするのが、イヤってほど多いが、全ての苦難を乗り越えた後で、「二人で」最初に迎えるクリスマス、などとする箇所は、「三人」としないことだけで違和感。
ロマンスの材料にだけ子
どもが使われているようで。
この作品は評価高い故に読むことにしたが(【mirabooks版】で)、疑問があれこれ浮かんでそこまで手放しには称賛出来ない自分がいる。
ヒロインを辛い事件の被害者に置いているとわかった時点で、読むのはもっと慎重になるべきだったのかもしれない。
ハーレクインはメインキャラが飛行機事故で肉親を失っているというのも多い上に、事故などで病院に担ぎ込まれ生命の心配もされる、というのも多い。
またか、という思いを越えるほどドラマチックな造りが欲しい。
あと、ヒロインの、実はー、というのも、あれこれやり過ぎて、正直私は少し鼻白んだ。
普通の主婦にさせたくないのだろうが。夫の職場(洋物はよく妻が夫の職場に行っちゃうが、それを差し引いても)でのスーパーぶりも、その「実は彼女は・・」路線が鼻につく。第一、唐突だ。
しかし、事件のもたらす不気味な空気が作品をずっと支配して、最後まで読み手の興味を繋ぐのは熟練技と感じた。秘密と暴露の関係に、グレイスとガロンの信頼関係構築を遠ざけるリスクが沢山散りばめられているのに、二人が相手の愛を測りかねるのはそこじゃないんだ!?、とは思うのだ。
なかなか言えない、というレベルのことではなく、「実は」というのを作家がタイミングを図っているのが、なんとなく作為臭を感じる構成。
句点が消えている箇所があり、続きを読みに再度開くと現れていた。
飾りの無い文章が、ストーリーの展開力にスピード感をもたらすが、平易な言葉遣いで出来事や会話を目で軽く流すだけで、表現を味わうことなくエピソード順に淡々と読めてしまって、牧場の空気やジェイコブズビルの地勢的な土地柄が掴めない。
バーバラやミス・ターナー、その他準主要人物の情報も私には物足りなかった。
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