リズはやりきれない思いで、一人ビーチにたたずんでいた。元フィアンセに別れを告げられたのは、三十分ほど前のこと。甘い言葉を真に受け、異国から彼が帰ってくるのを待ち続けたのに、彼はたった一通のEメールでリズを捨てたのだ。しかも、共同の銀行口座に入っていたお金を根こそぎ奪って。こみあげる怒りに任せて、リズは声に出して誓った。次にまともな男性に会ったら、迷わず飛びついてみせるわ、と。「僕なら大歓迎だよ」ふいに背後から聞こえた声に振り向くと、信じられないほどセクシーで屈強な男性が立っている。危険だと本能が警報を鳴らしているにもかかわらず、足に根が生えたように、リズはその場を離れられずにいた。