ハーレクインノベル「フラッシュバック」(テリー・ヘリントン作)の翻訳が小気味良かったので、同じ翻訳者進藤あつ子氏の手になるものを探しているとき、一際手厳しいレビューを見た。
翻訳者として駆け出しの頃と、脂が乗ってきた頃との違いかと調べてみ
たが、あちら2014年、こちら2016年と制作日はこちらの方があと。
どれどれと、その辺のところを確認したくて試し読み、悪くないと直感したものの、今一歩読み進めたらば私もがっかりするのかな、と思ったが、いやむしろ、恋愛感情描写は私の胸が動悸するくらいだった。
ただ、英国人女性とスペイン人男性、ハーレクインでは有りがちな組合わせのようだが、現実合いにくいだろうとは思っている。
それにしても葡萄畑に向かう冷やされた車内で上着云々は逆だろうとは感じた。暑いから脱ぐのではなく、差し込む日差しから守るため羽織っていいのでは? 私の思うスペインとは違う。
お互いの理解が進んでいない段階の、遠回し表現が産み出す曲解がリアル。
だが、悪い知らせを持ってくるソフィーへのお祖母様の先回り発言は、愛していたなら奇妙。まるで二人のやりとりを省くために表している様で、作家魂の誇りは無いのかなと。そして、太陽云々は、作者の言わせたいミランダ像を語らせているに過ぎず、些か鼻にもついた。まず、お祖母様の愛し方を窺わせる言動が多少突き放した感ありながらの、テオドロに会いたい、の言葉は乖離してる。挙式控え既に妊娠中であったはずのミランダのシャンパンも、違和感しかない。いくらスペインが、子供の頃から水代わりにワインを飲んでいた時代もあるとは言っても。ましてや、ルイスの父親ぶりといわず、ミランダも写真をソフィーに送りつけていた経緯もありながらが、もやっとする。作話の方に?多し。
一方で例えば、「最初に会ったときにキスしたいと思い、そのときでも既に遅かった。いまではますます遅すぎる」など、どんな原文かは知らないが、訳の日本語はピッタリ心情を出している。
本作品は、私の恋愛感覚に訴えるものはあった。
スペイン人男性を情の厚いとし、彼を子煩悩パパ設定としたのも歓迎。
HQマンガでもお馴染みの「ケリーダ」はもう専門用語のような顔しているが、他の呟きレベルの西語に、やっぱり学び直したい気分にさせられる。翻訳だからカナ表記添えるのはあり、とは思うが、文章脇の西語の読みルビ配置がニクかった。
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