タイトルにもなっている「森の妖精」とはいったい何者か、は明かしません。本作は雰囲気で読ませる藍川作品のなかでも特にヤマ場である男女の営みに持っていくまでの過程が秀逸です。舞台は十和田湖、八甲田山。京都など古都を多用する氏にしては珍しいと言え
ますが、北東北の名所の美しい描写が、ヒロインの揺れ動く心情によく投影され、妖精の魔法よろしく甘美な境地を演出しています。性表現も丹念で、一歩一歩丁寧に、読者の気分を高めてくれます。ただ1点、個人的な趣味かもしれませんが、ヒロインの身上設定が子持ちの主婦というのが少々、生活感が出てしまい、盛り上がりを冷ましてしまうかも。そのため星はひとつ差し引いて四つとしました。
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