「泣いて苦しんで歪んだそのぐっちゃぐちゃな顔、ちゃんと俺に見せてください」
霜月麗奈、27歳。製菓会社に勤める彼女は、職場の後輩に淡い恋心を抱いていた。
相手は3歳年下の速水傑。将来を期待される若手で、整った容姿に穏やかな物腰、品のある佇まいも相まって社内の女性たちの注目の的だ。
引っ込み思案で異性と付き合った経験もない麗奈にとって、彼はまるで別世界の人のように思えた。
遠くから見つめるだけで幸せ――そんなふうに考えていた。
その恋心が歪み始めたのは、ある日の残業中。
誰もいないオフィスで、傑の忘れ物に気づいた麗奈は、ふとした出来心から、それを手に取ってしまう。
自己嫌悪に苛まれながらも、彼への想いはエスカレートしていき……ついに本人にその行動が知られてしまう。
慌てて謝罪をする彼女に対し、傑は「秘密にする代わりに一週間身体を差し出せ」と言い出してきて――。
都合の良い関係と分かっていても恋心を捨てられない女と、愛と信頼を知らない男、歪んだ者同士のアブノーマルな1週間がはじまる。
第32回フランス書院文庫官能大賞受賞作、約17万字に大幅加筆して登場。