ハキダメとは、スラム化したかつての中心地域を指す俗称であり、そのスラムを根城にする犯罪組織のことでもある。
公安保安庁特別捜査局・組織犯罪対策課の曳島梛は、勤続10年目の28歳。ハキダメを解体すべく結成された第5特別捜査チーム所属の捜査官だ。
肉体増強カスタムが当然の特捜内において、メタアレルギーの梛は唯一全身生身でありながらも、トレーニングによってトップクラスの強さを身につけた、筋金入りの努力家(バカ)でもある。
そんな梛には忘れられない男がいる。
5年前の作戦でわずかな言葉を交わした正体不明の男。
その男の言葉が梛の拠り所だった。
作戦が本格化し、自らの存在意義に迷った梛は、情報通だという贋作屋に会いに行く。
万木と名乗る贋作屋は飄々として苛立つ存在で……。
だが、その言葉の端々がなぜか梛の心をざわつかせた――。