雲海に浮かぶ霧の峰々、竜人の都・霞ヶ峰。地上の小さな香房で薫物を調える香司見習い、それが瑞貴の暮らしのすべてだった。誰にも特別だと思われない諦観の中、十九の春に初めての発情期が訪れる。Αが殺到する危機の瞬間、彼を翼に抱いて雲の上へ攫ったのは、霞ヶ峰を統べる若き竜帝――氷の竜眼を持つ覇竜、焔牙だった。「お前は、俺の番だ」。八百年、ただひとりの運命の対を探し続けたという竜種の覇王の黄金の竜眼が、彼だけを射抜く。番の儀式、竜人評議の政争、霞の末裔の血脈、鎮め香の秘伝――運命と竜の本能に絡め取られながら、やがて彼は自ら項を差し出し、覇竜の逆鱗に触れる唯一の番として己を捧げる覚悟を持つ。BL異世界竜種オメガバース長編、全10章完結。