常々疑問だったわけです。SMクラブを取り扱う作品において、それが経済的特権階級者が会員の条件であることが多いのは何故か。単純に性癖の話ならばそれに貧富は関係ないのでは。その答えの一片がありました。主人公はまだ何者でもない学生です。しかしクラ
ブで優遇されるほどの性質。彼を理解するに、1つ。彼は、周囲の期待に応えるあまり、「本当の自分」を外に発揮してこれなかった性質です。それをとっかかかりに考えるとSMの本質の1つに、「周囲に見せる自分」と「本当の自分」の差にストレスが溜まる人間性があるのかもしれません。個人的にはそれこそ"自分"次第では、と思ってしまいますが、それが出来ないほどに追い込まれた人間、言い換えれば周囲の期待に応えるために自分で制御出来ないほど頑張っている人間が救われる手段なのかもしれません。経済的特権階級者がSMクラブに入れるのではなく、SMクラブを必要としているのは経済的特権階級者(=社会的成功者)という図式。そう考えるとタイトルの意味にも何となく納得。(ヘルマン・ヘッセですよね?)。そこまで考えて、ぜひ本作には篠田のスピンオフを描いて欲しい…。篠田が謎過ぎる。大学生の年代で王様引退はあまりに早過ぎる。SMで早咲きの才能とは、不穏でしかない…。篠田から幸せの匂いがしないのが可哀想に思ってしまいます。他の方のレビューで、何故女性じゃなかったんだろうかというのには、考えさせられました。主人公がホモじゃない、と口に出して言うならば確かに女性のご主人様を迎えた方が良いだろうに。その辺は自分も不可解に思ってしまいました。あくまでBLだから、程度にしか思えませんでした。ただ、作中主人公も自問自答してますが、色々全部すっ飛ばして好きってことでいいのかもしれませんね。性別の相性よりもSMの相性の方が互いの好みを合致させるのは難しそうですから。
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