黄昏時を過ぎた窓の外を見やる2つの背中。握られた手。指の最後の1本の絡みに、名残惜しさと離れ難さを感じる別れの場面。この2人に何があったのかな…と考える冒頭。
あとがきにある、「ラブ手前で終わった」とキレる編集さんの姿を想像して笑ってしま
いました。私は、とても満足しています。この描き切られていない余韻がいいなと思います。本編中も、セリフがないコマが結構あるのですが、その気持ちの余白部分、あえて言葉にしない(できない)感情の揺れのようなものが、じわじわ伝わって、胸に染みこんでくる感覚がとても好きです。
「ラブ手前」と言いつつ、私的には愛深いお話だったと思いました。交わるシーンが一度だけあるのですが、これが、もう、何とも言えない臨場感がありました。ずっとくたびれた中年として描かれていた金春先生が、とても可愛く色気があり、「あぁ、好きな人の前ではこうなんだな…」とすごく切なくなりました。想い合っていても、好きだけでは、勢いだけでは一緒にいられない別れを、「現実的だな…」と思いながら、眺めていました。蛇原編集長の伝えたいことも分かるし、安田、きれいごと言いやがって(きれいに終わらせようとしやがって)と思わなくもないのですが、ままならないものです…。
他作品でも、別れを描かれているのですが、作者様の別れの描き方が好きです。別れた後の姿もとてもリアルで痛々しいけれど、ボロボロになりながらも、もがくことさえできなくても、ただ淡々と日々をやり過ごしていく姿が胸に染み入り、その先にわずかでも光あれと思わずにいられません。そして、必ず光が見えるラストも好き。田ノ原ガンバ!頼んだぞ!
シリアスだけでないユーモアセンスもとても好きです。番外編のチロたん可愛い「もみってください」をいつか使いたい笑。
絵はシンプルですけれど、ストーリーはなかなかにコンプリケイテッドです。(10/27までセール)
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