婚姻の解消を本心では望まない二人。
彼が誠実になったこと、そして、自分のことを彼は守ってくれると、日増しに彼への信頼が高まる様子が伝わる。
雪が積もったふかふかのところに二人で倒れこんでキスをする場面は、ベタであってもいい感じで良か
った。
君が来てほしいといえば慰めに行くのに、という、彼がヒロインに自分のところに来て欲しい、また、ヒロインが彼にそばについてて欲しいと願う、この二人の気分の盛り上がりの場面、ちょっと感動した。信頼の醸成はやっとここまで来たかと。
考えてみると、子どもと思ったら大人の男は相手を女として扱うのは厳しい。魅力的な娘だとの認識があった相手としても、成熟した男性は成熟した女と関係を結べるが、子どもに踏み込めない。それが出来るのは変態かロリコンか、といった、歪んだ欲望の持ち主かもしれない。本人が自身を子どもとの自覚なかったとしても、お人形とお出掛けする精神年齢レベルでは無理というもの。
不貞を容認する訳ではないが、十代の時に人を好きになるリスクはそこにある。好意に気づいてくれても、手を出してきたりは常識的な男だとしない。
結婚ということではこのストーリーは、子爵は勿論分が悪い。
しかし、女性と軽々しく遊ぶことを6年前に断ち切っているため、あとは、妻が過去を許せるか許せないか、今はもう乗り越えられたのか依然として許せないかなだけで、ヒロイン以外の人間が成敗気分で彼の行状を断罪する資格はない。
ある統計で、イギリス(フランスではなくて!)も、配偶者以外と関係をもつ比率は低くはない。
罪悪感を抱いて二度と不貞をしない生活を送ってきた彼が、まだ外野から糾弾されるのは、罪としては過大と感じる。妻殺しの汚名により、社会的断罪は6年受けている。ほったらかしに互いに配偶者を遠隔地に置くストーリーも少なくないHQにあっては、当初から比較的罰を背負っている子爵様なのである。
1巻目で借財は「主に」父の代のものであること、冒頭でこれ迄の人生の責任を取るつもりのドミニクを描写、そして、ヒロインの父は、自ら娘ではなく婿であるドミニクの方に遺産を残していると説明されている。
また、その事を当たり前などとは決して思っていない。「自分の娘ではなくて/他人の僕にですよ!」とほぼ冒頭で言わせている。
この設定を受け入れられなければ、このストーリーを楽しむことは出来ないだろう。
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