巧みなストーリーテリングは荻丸先生の見事な筆捌きに負うところ大だが、物語のキーであるネックレスが果たす役割はもう一人の性格俳優のよう。心に深く鋭く切り込む強烈な存在。凄い揺さぶりをかけてくる。未読だが原作にも通じているのだろうと想像。反対に
、もし原作にこのネックレスがそれほど比重を持たないのであれば、荻丸先生の凄さここに際まれり、だ。
ミステリーとか単純な愛憎の二面構造とかを超越して、物を大切にする心の背景にある、授受行為の当事者にとっての感情の化体として、実に重い存在感。それを見つけたい気持ち。消えた訳に込められた意味。人間普遍の一種の愛情表現として、ストーリーの持つ広がりをネックレスを通して味わえた。それも、渡す方ではなく、受取サイドの心情の方により焦点が当てられて、心に染み込んでくる様なエピソードとして、鮮やかなのだ。
なかなか見つからないときは出てこない故の心残りを、心のキズの未だ癒しきれない部分のえぐられる様な苦しい痛みを、叔母さんの拭い去れない哀しみの過去を、ネックレスは語らないのに、或る意味雄弁。
彼にとっての憎しみの象徴でもあり、何物よりも強い、全てのメインキャラの人の情を象徴する品物。
二人の愛情の氷解も無理がなかったし、この話はネックレスが作り出したドラマにやられた、という感じがする。
ヒロインの償いの気持ち以上に、深い愛情を表してくれた、判っていたら許さないかもしれない人のキャラが愛すべきキャラに描けている。この人を巡るストーリーも出来そうな、深みを見せてくれる。愛と憎しみ、それでも、人を愛する、ということを高らかに、この人のキャラが歌い上げている感じなのだ。
安易にお涙頂戴と済ませられない、上手いドラマの盛り上げ。
物語最後までこの愛憎の行方を見届けさせてもらった。
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