絵もストーリーも矢沢先生のこだわりが感じ取れて、頗る良かった。こういう彷徨感と、ひとつの節をくぐった感の果てにあるああした終わり方だからいいのに、と思うのだが、レビューには私とは正反対の感想も多い。十代の迷走、子から見た親の価値観の受け入れ
がたいところ、恋愛に走る日々の刹那の輝き、脆さと自信(若さからの)、進路と夢と足許の現実と。
矢沢先生の世界は、角度の妙ある屈折を、美しく魅せてくれた。その中に、他の少女・女性向け漫画にはない硬質な殻も薔薇のトゲのような痛みも入っていて、不安定で先の見えないつかみどころの無い日常に一生懸命な登場人物達が、その足場を守っている。
それがいいとか悪いとかではなくて、取り戻せないと分かっていて、手放し(され)て自分が考えて選択したことに結果が伴ったのだろう。
カオリさんのかませかたが、多少強引というか、行き当たりばったり要素を感じるというか、紫の結末ありきで引っ張ってきたエピソードに感じられ、このキャラにもっと以前に影でも露出させてくれた方が良かったように思う。また、浩行が訳知りに嵐に対して分析、(見せ方)やり方には不自然さが。。それによって嵐と十和子カップルへの私の眼差しは途端に理屈っぽさが目に触り出した。浩行との関わりのあからさまな整理だてが、キャラ達の性格からの行動というより、矢沢先生の意志を見せつけられたようで私の納得感が却って弱くなった。
全て細部まで筆が入っている感じは、逆に遊びとかゆるさが少ないのが、見る側としては息を抜けなくて、少々「楽しむ」要素が微妙にはなる。
2022年7月原画展を観に行ったが、本作の衣装絵がとびきり美しかった。本作を読んで、矢沢美学、みたいな原画に包まれたあのときの感じを髣髴とさせられた。
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