絵柄や長過ぎるセリフは人を選ぶと思いますが、間違いなく良作です。すごく真剣に生徒の成長を考えてる鈴木先生とそれに応える生徒たち。登場人物が様々な問題と正面から向き合う様はとても清々しく、色々な経験を通じて子どもたちは精神的に大人になっていき
、逆に何も考えず幼かった自分の少年時代が恥ずかしく思えてくる。
この漫画の素晴らしいところは、鈴木先生が子どもに訴える主張の根本にある、世の中の物事はマルバツでは割り切れるものはほとんどなく、グレーゾーンの中のせめぎあいこそが最も大事なんだという部分、これがフィクションでなく正に真理であるということ。マルバツだけを求められる中高の受験勉強の世界に浸っていてはその真理から遠ざかるばかりだが、受験の世界では無駄とも思えるその点をあえて掘り下げて子どもたちに伝えようとする鈴木先生の姿勢が素晴らしい。こういった経験は子どもたちの人生に後々大きく効いてくるのは間違いない。
かくいう自分は受験勉強では勝ち組と言われる部類に入るが、先に書いた真理の部分はまったく疎かにしていたため社会に出てから大変苦労した。挫折を重ねて苦しみ抜いてようやくこの世はマルバツだけでは測れない、グレーゾーンをいかにマルに近づけていくかという真理にたどり着いたのは30半ば過ぎてから。それまではコミュニケーションの面で壁にぶつかってばかりだったが、そこからは歯車が噛み合いいろいろなことをうまくやれるようになった。
もし仮にこのような生徒たちがいたとしたら、きっとこの子達の未来は明るいだろう。成長したらそれぞれの活躍分野で中心となっていけるに違いない。だが現実にいる普通の先生は社会経験が足りず、自らの浅い経験を毎年ルーチン的に子どもに押し付けるに過ぎない。ゆえになかなかこのような健全な青春を過ごせる子どもたちは育たないのが現実であろう。漫画の中の世界とは知りつつも、願わくば小川蘇美さんのような子が成長してこの国をいい方向に変えていってくれたらなと思う。
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