勝手な一人相撲された相手に評判を落とされたヒロインには
身内や親戚も温かいとはいえなかった。どこに行っても噂があるから。才気煥発で外見も問題がなかったが、狭い社会のこと、色眼鏡で見られて結婚とか考えられなかった。
それでも、好奇の目
を逃れ、自分のことが知られていない所へ行って、少し落ち着きたかった。しかし、行った先でも偶然にもまた噂を知る人の一人が。
前半の二人の会話が言葉のゲームのように進行して、スコーンスコーンと、ボールを打ち合うかのようなラリーを観戦したみたいになる。マンガとして楽しもうとすると、文字で表現しなければならない会話は厳しい。でもこの作品、会話を楽しむ二人の舞台が素晴らしく、ヒストリカルものとしての要素を充分描写しているので、そこに広がる台詞劇といった趣があるのだ。
まだ組み合う前の様子見段階に、観察とつっつきを繰り返す間に互いに対する関心が高まって、ヒロインはこの辺で降りないと降りられなくなると思って彼から離れることにしようとした矢先、昔の事がまた・・・。
ヒロインは勇気と行動力を持ち、人々の好奇の眼を客観視でき、人が他人をどう思うのかを先読み出来る観察力に優れた女性。彼の冷静で男らしい判断力がヒロインには心地がよい。ヒロインのヒューマンな部分に触れて彼はヒロインを更に求める気持ちが強くなる。ヒロインも、クリスマスシーズンになって飛び出してしまった親戚宅から、あとを追いかけてきた彼に頼れるものを改めて認識。お互いに相手が自分の関心領域の近くに理解を持ってる存在なのはわかるので。
自分は未婚のままでいくことになると思っていたヒロインが丁度合う人に巡り会えた。彼は、女性への遊び心だけの当初の下心が一変し、いつの間にか真剣な感情へ。
ストーリー展開は、二人が結婚を急ぐ最後までどこか抑制的な関係だったが、彼が結婚を意識した辺りから二人の距離は終盤のハプニングに向かって段々と見事に連係がなされていき、二人の力で関係が太くなっていくのがわかる。
けじめのあるところも、二人が待ちきれずに大急ぎで結婚するところも、どちらもよかった。
ただ、宿屋の事件は、内容からいって仕方ないことかもしれないが、ドタバタした印象が少し二人のドラマと旅先ハプニングのかませ方を無理矢理にした感がある。
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