らしくない。好きなものを気持ちよく食べ、気軽に人々と接し、着る服は流行を追ってなどなくて(寧ろ背を向けて)。ヒロインは本当に一般市民として暮らした方が間違いなく合っているのだろうと思う。
王子と恋愛というガラではないように見える。
でも、気取らずにいられる人に出会えたら、それは相手が誰であろうとも本物の相手なのだろう。相手がいなくなる生活はもう過ごせなくなってしまう。
余りにらしくなさすぎて、お城の外観が出てくるまで、王子はもちろんのこと、皇太子だとか皇太后だとか、物語の背景はそんな世界なのに、その空気を状況を少しも伝えてこない絵柄にピンと来なかった。その後も、その空間を象徴する豪華さはない。
本来おとぎ話空間であるはずの城内で、ヒロインは萎縮しすぎることなく振る舞い、極端に自己主張する我儘さも無い。
彼女のそのありのままを彼は愛してくれた。頑張って見栄を張るようなところのない、自然な彼女を。その彼の状況を知れば知るほど全力で味方するヒロイン。彼女にはその後の約束など期待は無いのだから全く打算のない行為。
二人はため息の出るようなうっとりするような夢の世界のきらびやかさなどない。
お城、王子、民、城内のお仕えする人々、どれも背景は王子モノにあるべきものなのに、立派な調度でもなく豪華なドレスでもなく、国の将来を考えるシーンの方がリアル。
そこに、王族としての強い意識が現れている。自分の利益追求に走らず、何を矜持とするかが明確に彼らのスタンスに現れていて、ひとりのひとりの人物として素晴らしい。
愛しちゃダメだと思っても既にその時点で手遅れ。王子が、ヒロインの帰国の日が近づいていることをを認識するシーンは、私も二人の別れの寂しさにひとコマひとコマ読み進めるごとに胸がチクチクした。
そして、帰国後のヒロインの虚ろな日々の辛さも、ヒロインに心が同調した。
ふたりは、王子と一般女性という前に、ただのお互いを愛してしまった二人なのだ、という最も基本的なところを表現した作品なのかもしれない。
だからこそクライマックスの、普通の男、という表現が生きてくる。普通の女の子の「普通の」男性とのラブストーリー。
コミカライズしなくても、活字のままでもよかったような気がする作品。原作読んでないのになんだが。あ、もちろん、コミカライズしてなければ私は読んではいないですよ!
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